たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
そこから,自分がどうやって帰ったのかも分からない。
教会は,200年も昔に発足した名ばかりの組織。
当時の王が他国から輸入した信仰の文化を利用して建てたのが始まりである。
実際はそこに王の信仰など含まれておらず,真の目的は暗殺集団の育成用アジト建設にあった。
教会と言う建物は,民から金を巻き上げるに事欠くことがない。
税金を無理矢理引きあげるよりも,王の思惑通りずっと効率のいいものだった。
知る人ぞ知る王侯貴族御用達の,人殺し集団。
堂々とするその裏では,清廉潔白などありもしないのが教会だった。
一見王侯貴族の権威を蔑ろにするかのような宣言も,実際は互いの協力関係を強める目的があったりなどもして。
近年は他国からやって来た"本物の司祭"が要職に着いたこともあり,本来の姿を見せ始めているものの……
暗殺業は,その目につかない範囲で今も行われている。
その代表的な例が,私のもとにやってくる刺客達だった。
まず,王から命令を受けた家臣がさらに教会へ依頼を出し。
私のせいで帰ってこないことによる人出不足と,年々白くなる教会内での近年の動き辛さを背景に持つ教会が,他国やその辺のちんけな組織に依頼をだし。
結果,育ち切らないほぼただの人間である輩が私を襲撃し続けているのである。
清廉潔白を謳う教会内部で直々に育成される暗殺者は,身元不明な捨て子と決まっているけれど……