たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~


(エヴィーは確かに体幹がいいし,よその女の子より筋力がある。でも,少なくともそういった類いの動きは見せたことはない)



狙う狙わないをよそに,暗殺を家業にする人間には独特なくせがある。

エヴィーにはそれがない。

だから,エヴィーは教会出身の暗殺者と言うわけではないはずだ。



(だからと言って,ただの捨て子や教会のたかが個人の娘では,あのような扱いを受けることは出来ない)



つまり,エヴィーは……



(信じたくないけれど,教会の重鎮達のうちのどれかの娘と言うことになる)



綺麗な面だけ見せて育てたのだろうけど……

今の重鎮の面々からいくと確実に,エヴィーの両親は私の首を狙っていることになってしまうのだ。

そうなると話は変わる。

もし,私たちの師弟関係が露見したとして。

エヴィーは知らなかったで済むはずだった。

エヴィーの両親はエヴィーを庇って抱き締めていればよかったし,魔法や知識を得られただけ損失はないはずだった。

けれど,教会の重鎮の娘ともなると,それだけで済むはずがない。

私を殺すために,エヴィーを利用するくらいならまだいい。

私さえかわし続ければいいのだから。

けれど最悪,エヴィーを盾にしたり,勘当する可能性さえある。

まともな人間はあんな組織で頭を張り続けようとはしない。

私達の関係は,最初から。

お互いに毒になるものだった。

気付いた途端悶々と,エヴィーとの過去が後悔に変わっていく。

1人で生きると決めた日から,私は誰とも関わってはいけなかったのだ。



(エヴァ·ルイス)



ルイスの性に聞き覚えはないけれど。

もう,あの子を引き離さなければ。


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