たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
心で泣いている。
森の魔女が生まれた日。
「エ,ヴィー……ハリー」
何も見えない。
うっすらと,どこかの音が聞こえる。
失いかけているもの,もうとっくの昔に失ったもの。
溢れ落ちていく空虚な感覚に,私はすがるような声を出した。
(もう,いや,いや)
にくい,にくい,あの顔が浮かぶ。
「おっはよー師匠! ……? エルさん,入るよ?」
うっすらと,誰かの声が響く。
これは,誰のものだったか。
「だ,れ……」
譫言のような,自分の声。
そう,あれは
「エ,ヴィー?」
ぽつりと,また落ちた。
部屋に侵入してきた誰かが,コツンと足を止める。