たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
「……! エルさん……!! どうしたの,大丈夫?!?」
ぱたぱたと,うるさい。
身を起こすと,エヴィーがいる。
「……?!? エヴィー?! あなたどうして」
いつの間に寝ていたんだろう。
気付けばとっくにもう朝で,当たり前にエヴィーがやって来ていた。
(嘘でしょ……?)
森に移り住んで,私が気を緩めることなんて無かった。
ましてや体内時計に反応することも,目覚まし時計の音に気付くこともない程深く眠りこけることなんて,1度もなかった。
(不用心にも程がある)
誰かが尋ねてきたら,それだけで死んでいた。
死にたくないなら,それなりの生活をしなくてはいけないのに。
「エルさん,大変! 熱がある」
「ねつ? 私が?」
「そうだよ,誰だって熱くらい出すときもあるよ」
もっともだ。
そこそこの温度を発しているのか,額に手を伸ばしただけのエヴィーの動きにすら反応できない。