たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
「病院は」
「いかない」
「そうだよね。ここからの移動じゃ悪化しちゃう。……教会なら直ぐ見てもらえるのに」
困った声とともに,額がひんやりとする。
エヴィーが手のひらに膜を張るようにして,水を発現させていた。
熱に当てられて少し減る。
「エヴィー」
「なに? エルさん」
耳に心地よい,普段より更に温かいエヴィーの声。
(私今,甘やかされているんだわ)
帰りなさいも,もう来ないでも言えない。
息が,とても苦しいから。
「エヴィー,おやすみ」
「おやすみなさい」
(今はもう,何も考えたくない。それくらいならいっそ,長く眠ってしまえばいい)
いつかの思考に逆戻りしていることにも気付かないまま,私は深い眠りについた。