たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
「嫌よ。そんな風に言うなら,今度は大人の女性について教えてくれればいいじゃない」
「聞き分けないこと言わないの,エヴィー」
するりと扉を開けた。
いつも出迎えれば飛び込んできたエヴィーの笑顔。
時に全身で飛び込んできた,女の子らしい身体。
(もう,抱き締めることは出来ないけれど)
「『ねぇ,上を見て? いいものを見せてあげる』」
エヴィーがはっと息を呑んだ。
夕の暮れる,朝だった昔よりもまだましな明るさの空。
森の木の額に縁取られて,私からエヴィーへの最後の魔法が発現した。
大きな音と共に,いくつもの花が咲く。
中には鳥や四枚の花弁をもつ花のようなものまで交えてあった。
(予定にないパフォーマンスだけど。……良かった,成功して)
「エル,さん。これ」
「ええ,前に知識をごり押して発現させた花火を改良させたの。あれのレシピは教えたでしょう? これと同じものが欲しければ,自分で考えなさい」
(ね? ちゃんと私はあなたの中にいるわ,エヴィー)