たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
「ふ……ぅ,ダ,ニー……ぃ。どうして」
「エヴィーにしては慌ただしい音がしたから。それに本当にエヴィーが来たなら,出迎えてもおかしくないだろ?」
何度もうんといいながら,私は上下に大きく頷いた。
「あり,がとう……っ」
冷えたからだに,ダニ-の体温は心地よい。
誰よりも安心できるのは,ダニ-の腕の中。
指に触れるダニ-の髪の毛は,少しだけ濡れていた。
もしかしたら,"訓練"の後で,シャワーを浴びたのかもしれない。
少しずつ頭が回り始めた私の背中を,ポンポンとダニーが叩く。
「どうした? エヴィー」
いつだって誰よりも真っ先に駆け付けて,誰よりも私を甘い声で甘やかすから。
私は安心して,その大きな背中にしがみついてしまうのだ。
だけど,何をどう話していいのか,私には分からなかった。
「ほら。話してみ,エヴィー。大丈夫だから。……それに"勇者"がそんな顔じゃ,どこにも行けないだろう?」