たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
ひくっと,しゃくりあげる私に,ダニーはゆっくりと語りかける。
宥めたり,笑わせようとしてくれたり。
ダニ-は私が話しやすい空気を作ろうとしてくれていた。
それだけで充分だと,心から思える。
(……おちつく)
はーと熱く息を吐いて,私はダニ-の首筋に顔を埋めた。
そして,ぽつぽつと言葉を選んで打ち明ける。
師匠の弟子を,卒業したこと。
それが,とてつもなく悲しいこと。
なのに,もう逢いに行くことすら出来ないこと。
エルさんの傷に気が付きながら,触れることも治すことも出来なかったこと。
どれが一番の悲しみかなんて,分からなかった。
全部おんなじだけ,私には悲しかった。