たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~


「エヴィー。その師匠とは本当にもう逢えないのか? 少し経ってから逢いに行くのすら許せないのか?」



こくんと,間を置いて頷く。

時間はきっと,エルさんには関係ないのだと思うから。

理由も分からないのに,私から逢いにいくなんて,できない。



「エヴィーが無理でも,俺が変わりに……」

「それは,もっと……だめ」



今度はきちんと,自分の言葉で返した。

エルさんが私を弟子に取る前から,何度も繰り返し私に言ったこと。

守ると頷いた約束を忘れはしない。

きっとエルさんの言葉に,無駄なことなんて1つもなかったから。

あんな森の奥に,たった1人で生活していたエルさんは,もしかしたら



(人が,嫌いなのかもしれない)



誰かに傷つけられた過去を持っているのかもしれない。

そこに,私の大切な人であることなんて,関係ないんだろう。

なにより,あんなに閉鎖的に暮らすエルさんが,それでも私を弟子にしてくれた。

沢山のものを,何も知らない私にくれた。

その関係を,エルさんを。



「大体,その師匠は何者なんだ? 誰も知らない知識を持ってるし……エヴィーが言うから誰にも言わないでいるけど,俺たちさえ性別や名前も知らないんじゃ,何もしてやれない」




(裏切りたく,ないから)
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