たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
元友達,今の恋人。
そして,魔女"討伐"のためのパーティーメンバーの1人。
私の剣士であるけれど,ダニ-の温かさはエルさんの魔法に近い。
"他国から来た司祭であるお義父様"は,私とダニ-との出逢いを"運命"だと言っていた。
(本当に,ダニ-が私の運命の人ならいいな)
お義父様の話す運命は,ダニ-だけじゃない。
だから,そういう意味ではないと分かってるけど。
いつかそういう意味での運命にしたいと思っている。
ダニ-もエルさんも。
どちらも私にとってはかけがえのない人には変わり無いのに。
どうしてこんなにも,距離の違いを感じるんだろう。
(私は"また",誰かの特別になれなかったのかな)
多くを望んだわけじゃない。
それでも……
普段は眠る孤独が,ひっそりと顔を出していた。
その時,私が上ってきたのと同じ階段から,この階層の住民が2人上ってくる気配がする。
賑やかで,とても大好きな声。
『ねーえ,買いすぎじゃないの? ノア』
『人の買い物に口を出すなよベッキー。僕は買いだめする派なんだって,何度言ったら分かってくれるのかなあ』