たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~

どちらもそれぞれで買い物に行っていたらしい2人は,日常茶飯事な憎まれ口をお互いに叩き合いながら,軽やかにやって来た。

ベッキー·アトランとノア·クリステル。

一時的に教会の最上階で暮らす,残りのパーティーメンバー。

お義父様は,上司が王命(いらい)の一部として連れてきたノアの事だけは,運命でないと言ったけど。

皆大好きな親友(ともだち)には変わりない。



「ん……あら? 何してるの2人とも」



先に顔を出したベッキーが,いち早く私達に気付く。

釣られるように目を向けたノアは,一瞬の見開きの後,眉をひそめた。



「……たまたま出掛けてたとは言え,僕達も一応は住んでるんだから堂々といちゃつくのは控えて貰える?」

「えへへ,ごめんねノア」

「っ別に,いいけど」



そっと離れて,笑いかける。

ノアは厳しいように見えて,本当は誰よりも懐の深い性格をしていた。



(甘えすぎかな,なんて)



ダニ-から離れても,1度へたりこんだ体は簡単には動かない。

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