意地悪なクラスメイトが、最近甘くて困ってます
返事を聞くのが怖くて、私は俯きそうになる顔を必死に上げると、陸斗くんの瞳が揺れていた。
「……ごめん」
まるでハンマーで頭を殴られたような、強いショックを受ける。
「僕、今まで希空ちゃんのことは……仲の良い友達だと思っていたから」
“ 仲の良い友達 ”
それはそれで、嬉しいけれど。
……そっか。陸斗くんは私のこと、好きではなかったんだ。
あまりのショックに、頭がクラクラして。
息も、いつもみたいに上手くできなくなる。
陸斗くんにポニーテールを可愛いって褒めてもらったり、ブレザーを貸してもらったり。
香澄ちゃんにも、脈アリだと思うと言ってもらえて……私は、きっと心のどこかで舞い上がってしまっていたんだ。
陸斗くんが私を好きだなんて保証は、どこにもなかったのに。
なんで、こんな勢いで先走ってしまったのだろう。
「……っ」
こうなったのも、自業自得なのに。
視界が涙で、だんだんとぼやけていく。
「希空ちゃん、本当にごめんね」
「ううん。自分の気持ちを、伝えたかっただけだから。聞いてくれてありがとう」
私はこぼれそうになる涙を必死に堪えて、何とか言い切る。
「あの、陸斗くん。私ひとりで図書室の鍵、職員室まで返しにいくから。先に帰ってて」
これ以上、陸斗くんと二人きりでいるのは辛くて。
私は陸斗くんの手から鍵を取ると、職員室へと向かって駆け出した。