エリート弁護士の執着愛
「男とホテルに泊まったことはない?」
「宿泊どころか……恋人なんて、いたことないです」
「へぇ、なら、そのタイチくんに感謝しなければな」
「なんで太一に感謝なんですか」
太一の話題を出されてムッとする。そのたびに〝ブタ実〟と太一の声で囁かれている気がして、ふつふつと怒りが湧き上がってくるのだ。
「君が何年もの間、タイチくんへの怒りで頭をいっぱいにしていたから、誰にも奪われずに済んだ。そして、俺が最初で最後の男になれる」
久能さんに背後から抱き締められて、その衝撃で息が止まりそうになる。彼は前屈みになると、見せつけるようにゆっくりと顔を近づけ、唇を触れさせた。
何度か触れるだけのキスが贈られ、壊れそうなほど激しい音を立てていた心臓が落ち着いた頃、啄むような口づけが少しずつ深まっていく。
「ん……っ」
鼻にかかったような声が思わず漏れて、恥ずかしさから唇に力を入れる。すると、私を宥めるような手つきで背中を撫でられ、気づくと正面から抱き締められていた。
男性とキスをするのも初めてだ。だが、久能さんが女性の扱いに長けているのはわかる。上唇と下唇を軽く食まれ、唇を割って舌が滑り込んできた。
「はぁ、はっ、ん」
口腔を弄られると、頭の奥が陶然としてなにも考えられなくなる。
足に力が入らず久能さんにもたれかかると、身体ごと抱き寄せられて、寝室に連れていかれた。頭がぼうっとしている間になにもかもを脱がされると、恥ずかしさも感じられないまま彼の唇が全身の至る所に触れていく。
「育実……可愛いな」
「可愛く、なんて……っ」
「たとえその感情が怒りだったとしても、彼のためにそれだけの努力をしたんだろう。ただ恨むことだってできたはずなのに、そうしなかった。見た目だけではなく心も美しいじゃないか。今、君を抱いているのは俺だ。俺の言うことを信じればいい」
彼の言葉で、心からトゲが抜けていくかのようだ。
私は誰かに認めてほしかったのかもしれない。よくやった、頑張ったと。一番認めてほしかった相手は太一だったけれど、彼は私を認めるどころかさらに深い傷をつけた。
「私、綺麗になったなって言ってほしかっただけなんです……」
「綺麗だよ、君は」
「本当に?」
「ほかの誰の言葉より、恋人の俺を信じろよ」
「ふふっ、恋人だなんて」
涙がぼろぼろとこぼれ落ちる。
それを唇ですくい取られながら、汗ばんだ手のひらで胸を揉みしだかれる。
「こら、冗談だと思うなよ?」
「はい……恋人、ですよね。優一さん」
よくできました、とばかりに胸の頂きに触れられ、身体が弓なりにしなる。ちゅ、ちゅっと音を立てながら彼の唇が徐々に下りていき、気づくと痛みもなく身体が開かれていた。
「ん、あぁっ」
身体が揺さぶられて、甘い疼きが頭の天辺まで駆け巡った。
頭の奥まで蝕む熱が全身を支配し、目の前で星が瞬く。涙の滲む目をうっすらと開けると、愛おしそうに微笑まれて口づけが贈られた。
あれだけ怒りに苛まれていたというのに、何度となく口づけられていくうちに、優一さんのことしか考えられなくなっていく。
私はこの夜、甘い熱に浮かされ、名前しか知らない相手と身体を重ねた。
「宿泊どころか……恋人なんて、いたことないです」
「へぇ、なら、そのタイチくんに感謝しなければな」
「なんで太一に感謝なんですか」
太一の話題を出されてムッとする。そのたびに〝ブタ実〟と太一の声で囁かれている気がして、ふつふつと怒りが湧き上がってくるのだ。
「君が何年もの間、タイチくんへの怒りで頭をいっぱいにしていたから、誰にも奪われずに済んだ。そして、俺が最初で最後の男になれる」
久能さんに背後から抱き締められて、その衝撃で息が止まりそうになる。彼は前屈みになると、見せつけるようにゆっくりと顔を近づけ、唇を触れさせた。
何度か触れるだけのキスが贈られ、壊れそうなほど激しい音を立てていた心臓が落ち着いた頃、啄むような口づけが少しずつ深まっていく。
「ん……っ」
鼻にかかったような声が思わず漏れて、恥ずかしさから唇に力を入れる。すると、私を宥めるような手つきで背中を撫でられ、気づくと正面から抱き締められていた。
男性とキスをするのも初めてだ。だが、久能さんが女性の扱いに長けているのはわかる。上唇と下唇を軽く食まれ、唇を割って舌が滑り込んできた。
「はぁ、はっ、ん」
口腔を弄られると、頭の奥が陶然としてなにも考えられなくなる。
足に力が入らず久能さんにもたれかかると、身体ごと抱き寄せられて、寝室に連れていかれた。頭がぼうっとしている間になにもかもを脱がされると、恥ずかしさも感じられないまま彼の唇が全身の至る所に触れていく。
「育実……可愛いな」
「可愛く、なんて……っ」
「たとえその感情が怒りだったとしても、彼のためにそれだけの努力をしたんだろう。ただ恨むことだってできたはずなのに、そうしなかった。見た目だけではなく心も美しいじゃないか。今、君を抱いているのは俺だ。俺の言うことを信じればいい」
彼の言葉で、心からトゲが抜けていくかのようだ。
私は誰かに認めてほしかったのかもしれない。よくやった、頑張ったと。一番認めてほしかった相手は太一だったけれど、彼は私を認めるどころかさらに深い傷をつけた。
「私、綺麗になったなって言ってほしかっただけなんです……」
「綺麗だよ、君は」
「本当に?」
「ほかの誰の言葉より、恋人の俺を信じろよ」
「ふふっ、恋人だなんて」
涙がぼろぼろとこぼれ落ちる。
それを唇ですくい取られながら、汗ばんだ手のひらで胸を揉みしだかれる。
「こら、冗談だと思うなよ?」
「はい……恋人、ですよね。優一さん」
よくできました、とばかりに胸の頂きに触れられ、身体が弓なりにしなる。ちゅ、ちゅっと音を立てながら彼の唇が徐々に下りていき、気づくと痛みもなく身体が開かれていた。
「ん、あぁっ」
身体が揺さぶられて、甘い疼きが頭の天辺まで駆け巡った。
頭の奥まで蝕む熱が全身を支配し、目の前で星が瞬く。涙の滲む目をうっすらと開けると、愛おしそうに微笑まれて口づけが贈られた。
あれだけ怒りに苛まれていたというのに、何度となく口づけられていくうちに、優一さんのことしか考えられなくなっていく。
私はこの夜、甘い熱に浮かされ、名前しか知らない相手と身体を重ねた。