御曹司からの切望プロポーズ~妖艶で蠱惑的な瞳に迫られました~
【明後日の日曜、映画を見に行かないか?】

 時計の針が二十一時を回ったころ、スマホがブルブルと震えて確認するとメッセージが来ていた。
 送り主は元カレの諒太(りょうた)だ。
 私はその文面を眺め、口をへの字に曲げつつ通話ボタンをタップする。

『もしもし。奈瑠(なる)?』
「もしもし。メッセージの件なんだけど」
『うん。どうした?』
「今度の日曜は都合が悪いから会えない」

 声のトーンを落としてそう伝えると、電話の向こうの諒太が残念そうに『そうかぁ』と返事をした。

 諒太とは半年ほど交際をしたものの、性格の不一致で三ヶ月前に別れた。
 なのに最近また頻繁に連絡が来るようになったので、彼に本心を尋ねたら、私ともう一度やり直したいらしい。
 そう言われても、はいそうですかとすぐに元には戻れない。
 互いの気持ちのズレによって別れたりくっついたりを繰り返すようになるのではないかと、一抹の不安があるからだ。

 そんなズルズルとした不毛な関係は、私が望んでいる恋愛じゃない。
 二十四歳だからまだ結婚は考えていないとはいえ、遊びみたいな付き合い方はしたくない。
 きちんと今後のことを考えてみたいと諒太には伝えてある。要するに今は保留の状態だ。

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