御曹司からの切望プロポーズ~妖艶で蠱惑的な瞳に迫られました~
「照れてる顔もかわいい」

 視線を外してうつむく私をからかうように、佑利さんが身体をかがめて顔を覗き込んでくる。
 心の中まで全部見られているような気持ちになって、恥ずかしさがさらに増した。

「ず、ずるいです。そんなに見つめないでください」
「俺のこと、少しは意識してくれた?」
「それは……はい」

 会食していたときはそうでもなかったが、今は目の前の佑利さんを存分に意識している。
 それくらい、彼の整った顔や仕草、大人の余裕にやられている自覚はある。

「うれしいな。俺は今日もっと好きになったよ。気持ちが深まった」

 今はっきりと“好き”というワードが聞こえた。
 どうやら適当なお見合い相手として私を選んだわけではないみたいだ。
 この人はいつから私に対して甘い恋愛感情を抱いていたのだろう。

「そろそろ帰ろうか。遅くなるとご両親が心配するから」
「はい」

 天城社長もだけれど、息子の佑利さんもとても紳士的だ。
 立ち振る舞いや細やかな気遣いに育ちのよさを感じる。

 美しい庭園に別れを告げ、ホテルの建物の中を通って一階のロビーに出た。
 正面出口の外には何台かタクシーが待機しているはずなので、佑利さんはそれに乗るつもりらしい。

「……奈瑠。なんでここに?」

 佑利さんと並んでゆっくりとロビーを歩いていると、会わないはずの人物と遭遇して我が目を疑った。

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