御曹司からの切望プロポーズ~妖艶で蠱惑的な瞳に迫られました~
「諒太こそどうして?」

 バッタリと出くわしたのはスーツに身を包んだ元カレの諒太だった。
 驚いて大きく目を見開く私とは対照的に、諒太は眉を吊り上げて怒りの表情に変わっていく。

「今夜は両親と一緒だって言ってなかったか?!」
「そうよ。先に帰ったの」
「は? ウソだろ。会社の会食っていうのも。どう見てもその男とデートじゃないか!」
「大きな声出さないで」

 恥ずかしいからラグジュアリーな高級ホテルのロビーで騒がないでほしい。
 たしかに諒太からすれば、この状況だけ見ると電話で聞いていた話と違うので誤解するのも無理はない。

「ウソなんかついてないよ」

 ウソではないけれど、来てみたら会食ではなくてお見合いだったと、どう説明したら納得してもらえるだろう。
 私は親に騙されて連れてこられただけなのだと。

「そんなの信じられるか! 俺と二股しようとしたんだな!」
「違う」
「ホテルにいるのに言い訳する気か?」

 ああ、そうだった。諒太はこうしてなんでも決めつけてかかる人だったと記憶がよみがえってきた。
 付き合っていたときも、私の話や弁明を聞かずに勝手に勘違いをしてひとりで怒っていたっけ。
 そういう部分が合わないと思って私から別れを告げたのだ。
 最近はやたらとやさしく接してきていたから忘れていた。人の本質はそんなに簡単に変わらないのに。

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