御曹司からの切望プロポーズ~妖艶で蠱惑的な瞳に迫られました~
 日曜の午後、私は自室で出かける準備を始めた。
 今夜はサンセリテという高級ホテルの中にあるレストランでの会食だと聞いている。
 クローゼットからスクエアネックの清楚なオフホワイトのワンピースを引っ張り出し、鏡の前で身体に当ててみる。
 ウエストが絞ってあってAラインのシルエットなのでスリムに見えるし、服装はこれにしようと決めた。

 着替えを済ませたあと、ドレッサーのスツールに座ってメイクを施しながらも気は進まなかった。
 だけど会食相手は昔から懇意にしていて大きな取引がある株式会社リベルラの天城(あまぎ)社長と奥様らしいので、これも仕事だと割り切るしかない。
 小ぶりのピアスと揃いになったネックレスをあしらい、すべての準備が整った私は両親と共にサンセリテホテルへと向かった。

「お母さん……なんとなくメイクが濃くない?」

 早めに到着した私たちはレストランの個室へ通されて先方を待っていたのだけれど、ふと母の格好がいつもより派手なことに気がついた。
 ファンデーションや口紅は濃いし、今日はやけに指輪の数も多い。昨日美容院に行ったらしく髪もつやつやだ。

「そ、そう? 失礼があったらいけないからと思ったんだけど、やりすぎたかしら」

 高級ホテルのレストランで天城社長夫妻をもてなさなきゃいけないと意気込んだがゆえに、メイクが厚くなってしまったみたいだ。
 母も会食に出席するのは久しぶりなので、緊張しているのだろう。

「いつも思うんだけど、リベルラの社長はとてもやさしくて素敵な方だよね」

 ふと頭に浮かんだことをそのまま口に出してみると、父はそれに対してうんうんと深くうなずいた。

「そうだろう? 天城社長はとても信頼のおける人だし、ご子息の佑利(ゆうり)くんも立派だ」
「うん。佑利さんはいつもバリバリ仕事をしてるすごい人だよ。私、尊敬してるの。見た目もスラリと背が高くてイケメンでカッコいい」

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