御曹司からの切望プロポーズ～妖艶で蠱惑的な瞳に迫られました～
「これ、うちの息子。わかるよね？」
「もちろんです。何度もお会いしていますから」

　軽く会釈をしたところで高級そうなチャコールグレーのスリーピーススーツに身を包んだ佑利さんと自然に目が合った。
　白のシャツにパープルのネクタイを締めていてとてもオシャレだ。
　百八十センチを優に超えた身長で足が長く、ピンと張ったように背筋を伸ばしていて、まるでモデルのような体型をしている。

「奈瑠さん、こんばんは。そんなに緊張しなくてもいいのに」
「こんばんは。素敵なホテルでの会食なので、どうしても固くなってしまいます」

　あわててていねいに頭を下げると、彼は優雅な笑みをたたえていた。
　シャープな輪郭と高い鼻梁の持ち主で、意志の強そうなくっきりとした二重の瞳には自信のようなものを感じる。
　ナチュラルに整えられたダークブラウンの髪まで綺麗だ。やはり佑利さんはかなりイケメンの部類に入る。

　あいさつが済んだところでそれぞれの家族が向かい合って横並びに座った。
　私の正面には佑利さんがいて、なんだか気まずいというか気恥ずかしい。
　両親たちが和やかに歓談していると、ホテルスタッフによって豪華なフランス料理が運ばれてきた。

「奈瑠さんは、お酒は飲める？」

　食前酒に口をつけた天城社長が私に声をかけた。

「少しだけなら。すぐに顔が赤くなるんです」
「そうか。かわいらしいな。我々に遠慮せず好きなものを飲めばいいからね」
「ありがとうございます」

　天城社長夫妻が先ほどから私にチラチラと視線を送ってきているのはわかっていた。
　会食の場に引っ張り出された娘の私を気遣ってくれているのかもしれない。
< 5 / 28 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop