御曹司からの切望プロポーズ~妖艶で蠱惑的な瞳に迫られました~
「休みの日はなにをしてるのかな?」
「……え?」
「いやほら、趣味とかね」

 メイン料理が提供されたところで社長から再び質問が飛んできた。
 私のプライベートに関してそんなに興味があるとは思えないので、思わず聞き返してしまったのだけれど。
 正直、たいした趣味など持ち合わせていないので聞かれても返答に困る。

「そういうことは佑利と直接話したほうがいいんじゃないかしら」

 フフフと上品に笑いながら天城夫人が社長に言葉をかけると、「おお、そうだな。すまん」と社長もにこやかに笑った。
 ……これはなに? この状況だとまるでお見合いみたいじゃないの。

「僕は休みの日にジムで運動をしたり。施設内にスカッシュができるところがあるんです。奈瑠さん、今度一緒に行かない?」
 
 スカッシュはラケットで正面の壁に向かってボールを交互に打ち合うインドアスポーツだ。
 ジムに通っているだけでもカッコいいのに、佑利さんみたいなイケメンがラケットを握ったら芸能人みたいにキラキラしているのだろうと想像が膨らんだ。

「嫌、かな?」

 どう返事をしようかと考えて口ごもる私の代わりに、父が「嫌だなんて滅相もない」と先に答えた。
 驚いて思わず父のほうへ顔を向けたけれど、先ほど言われた言葉を思い出した。

『頼むぞ、奈瑠。くれぐれも粗相のないようにな』

 父の答えの中に“ノー”という選択肢はないのだろう。
 会社同士での会食だとはいえ、今日は“接待”の意味合いが強い。
 たいていのことには愛想笑いをして首を縦に振っていればいいのだけれど、私が佑利さんから後日出かけようと誘われたのは想定外だった。
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