御曹司からの切望プロポーズ~妖艶で蠱惑的な瞳に迫られました~
九重(ここのえ)社長、奈瑠さんをお借りします。きちんと家までお送りしますのでご安心ください」
「心配なんてしてませんよ。こんな娘でよければどこへでも(さら)ってやってくださいな」

 父も酔っているとはいえ“攫え”だなんて。今のは聞き捨てならない発言だ。
 佑利さんに「行きましょう」と言われ、私はあわてて立ち上がって天城社長たちにあいさつを済ませ、会食していた部屋をあとにした。

 サンセリテホテルの庭園は四季折々の花々が植えられており、誰もが癒される空間として作庭されている。
 私は初めて訪れたけれど、まさに都会の中のオアシスだ。

「きちんと手入れされていて、綺麗ですね」
「俺もこの場所は気に入ってるんだ」

 ふたりきりという状況だからか、彼がやわらかくフランクな話し方になった。
 私も堅苦しいよりは普通に話せるほうがいいので、少し緊張が解けて気持ちが楽になってくる。

『記念すべき最初のデート……』
『あとは若い者同士で……』

 頭の中でいろいろと考えていたけれど、先ほどのふたつの発言内容がどうしても引っかかって仕方ない。
 私は意を決して頭の中にある疑問を尋ねてみることにした。

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