空色の手紙は執着愛の証 ~溺愛は再会とともに~
最後に、親父に「仕事の話がある」と言われ、俺だけ残った時の事──
てっきり那知との結婚話について何か言われるのだと思ってたのだが、最初に切り出されたのは本当に仕事の話だった。
まぁそれが終わるとやはり話は那知の件に移ったが。
「賢太郎が那知さんを妻にしたいというのはよくわかった。那知さんもしっかりしたとてもいいお嬢さんだと思う」
そう言われて、よし!許してもらえる!と思った。
だが、親父の言葉はこう続いた。
「しかしだ。賢太郎、お前には諦めたくない女性がいるんじゃなかったか?その女性がいたから、紅羽さんとの許嫁の話も蹴っていたんだろう?…それが何だ、いきなり違う女性を連れてきて……それは紅羽さんが面白くないのも当然だ」
…だよな…
やはりイチから話さないとだよな…
「わかったよ、親父、全部話す。だけどこれは誰にも内緒にしてほしいんだ。特に那知には一番バレたくないんだよ」
「?……わかった。ここだけの話としよう」
「ありがとう。……実は、その諦めたくない女性が、さっき会ってもらった那知、本人なんだ」
「…どういう事だ。那知さんはお前より6歳も年下じゃないか」
と怪訝な表情の親父に説明した。
…14年前のあの夏、那知の家族と過ごした数日間の事と…先日、勇貴さんから聞いた、ご両親が亡くなった本当の理由、そして当時の那知の記憶がない事を。
親父は、俺の言葉を一つ一つ噛み締めるように聞いてくれた。
正直、ここまでちゃんと信じて聞いてくれるとは思ってなかったから……嬉しかった。
「…そうか……大学の頃、少し雰囲気というか、将来に対する目の色が変わったと思ってはいたが、それは那知さんと那知さんのお父さんの影響だったというわけか…」
「あぁ、そうだよ。那知のお父さんに自信をもらったんだ。俺が進んできた道は自分で選んだ道なんだ、って。…それに、将来、那知と結婚するにしても、まずはお父さんに認めてもらえる様なしっかりした大人の男にならなければと思って頑張ってきたんだよ。…だから今の俺があるのは、那知のお父さんのお陰だと言っても過言ではないんだ」
「…なるほど……それは私も那知さんの親御さんに礼を言わなければならないな。…本来、それは父親である私の役割なのだからな…。……しかし、ハタチのお前が14歳に手を出すとは…」
「まさか、さすがに手は出さないさ。純粋な那知に惚れただけだよ。でもシスコンな那知のお兄さんには冗談で〝ロリコン悪魔〞と思われてた様だけど」
「まあ…そう思われるのも無理はないだろう…」
「…俺は連絡が来なくてもずっと諦めきれなくて…他に好きになれる女もできなかった。…それがさ、2年位前に、キリが…あのキリがだよ?〝妹みたいにかわいい後輩がいる〞なんて珍しい事を言うから聞いてみたら、それが那知だったんだ。驚いたよ…まさかTOKIWAにいるなんてさ…これはマジで運命だと思ったんだ。…でもその当時、那知には男がいたし、俺も海外を行ったり来たりで忙しくて何もできなくてさ。…だから、那知がいつか…他の誰かと結婚したら…その時は諦めようとは思ってた」
「……それで巡ってきたチャンスを逃さなかったって訳か」
「あぁ。だから早く一緒になりたいんだ。もう…離れてたくないんだよ」
「お前の気持ちと那知さんの状況はわかった。…だが、紅羽さんの気持ちもちゃんと考えろ。…これ以上は私は関わらないから、お前が紅羽さんに誠心誠意尽くして話せ。…那知さんとの結婚はそれからだ」
「じゃあ、親父は那知との結婚を許してくれるのか?」
「…まずはコンペを楽しみにしているよ」
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