空色の手紙は執着愛の証 ~溺愛は再会とともに~
「なっちゃん、お帰り~!新幹線乗ってるだけでも疲れたでしょー、さぁ座って座って!ほらほら、キリたんも!」

社長室に入ると龍綺さんが出迎えてくれて、私達は応接用のソファに座った。


…前にここに座った時はコンペの詳細が来た時だったんだよね。
それがもう製作が終わって帰ってきたなんて。時の流れは早いなぁ…



「それで、なっちゃん。15日に華舞だったよね、コンペ」

「はい。15日の午後なので当日でも行けるんですけど、私は前乗りする予定です」

「それさ、あたし同行するからね」

「え、霧ちゃん、一緒に行ってくれるの?」

「モチよ!かわいい妹の那知を1人で行かせるわけないでしょ」

「あれ?キリたん、なっちゃんは義理の姉じゃない?」

「いーのよっ、那知はいつまでもあたしのかわいい妹なのっ」
なんて隣に座る私をぎゅうっと抱き締めてくれる。

「あはっ、そうだね。霧ちゃんはお姉ちゃんだもんね」

「俺は金曜の夜まで仕事があるから、当日朝イチの新幹線で行くからねっ!」

「ありがとうございます。…あ、賢太郎さんは来れるのかな…」

「たぶんその頃にはだいぶ片付いてるはずだから来れると思うよ。てゆーか近いし絶対に来るって!大好きななっちゃんに会えるんだもん!」

「ふふ、よかった」


「で、那知。作品はどんなの?」

「品物は明日届くから、今はこれでごめんね」

と、鞄から取り出したスマホを2人の前に差し出し、幾つかの画像を見てもらった。


「へぇ……いいね、シンプルだけどシンプルじゃない感じが那知にしては意外かも。新しい那知って感じ」

「へー、そうなんだ。なっちゃんはシンプルなタイプ?」

「そうね。あたしから見れば、シンプル、上品、優しい系、かな」

「そっかぁ。ねーキリたん、それっておばちゃんの作風みたいだね」


「おばちゃん…?」

「うん、キリたんのお母さん。おばちゃんのもシンプルだけどあったかい優しい感じだもんねっ」

「え、霧ちゃんのお母様も食器のデザイナーだったの?」

「うん。ていうか兄貴から聞いてない?」


「……何を?」

「常磐 美土里(ときわ みどり)。ほら、那知が一番最初に展示会でじっくり見てた作品を作った人よ」

「え……え、えぇっ!?…常磐美土里さんが…霧ちゃんや賢太郎さんのお母さん、てこと!?」

「そうよ。え?聞いてなかったの?」

「うっ、うん!知らなかった!えー!……びっくり……」

まさか、私の憧れた方が賢太郎さん達のお母様だったなんて……



あっ!
そう言えば…お兄ちゃんのとこに挨拶に行く時の道中で、賢太郎さんにTOKIWAに入社する経緯を話した時…

賢太郎さんが「ありがとな」って嬉しそうに言ってたのは、私が美土里さん…お母様の作品を忘れられない、って言ったから…なのかな。

もー…大事なことを教えてくれないんだから…

あ、もしかしたら、いつかサプライズで言う気だったのかな?
だったらごめんね、聞いちゃった。ふふ。

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