空色の手紙は執着愛の証 ~溺愛は再会とともに~
「よっしゃ、今日の仕事終了っ!確か今日ってリフレッシュルームのおやつ食べ放題だったよな。シノも終わったんなら一緒に行かね?」
「それ、アタシもいーかしら?那知を男と2人にはさせらんなくてね」
「もちろんっすよ。てか、シノを誘えば相馬さんも一緒なのは分かってますし」
「あら、さすが岸。じゃあ帰る前に小腹を満たしてこっか」
と、3人で階下へ向かった。
業務終了直後のリフレッシュルームはまだ誰もいなかった。
「やった!まだ残ってるぅ!昼休みで全部食われなくてよかった~」
岸くんが適当に選んだお菓子をミニトレーに乗せて、私達の座るテーブルに持ってきてくれた。
「ありがとう、岸くん」
「岸、気が利くじゃない」
「あざす!相馬さんに褒められるのって、課長に褒められるより嬉しいんすよね」
飲み物を傍らに置き、個包装のお菓子に手を伸ばすと、岸くんが辺りを見回してから「そーいえばさ」と話し出した。
「相馬さんから聞いてるかもだけど、リナちゃんさ、シノが山形行ってからもおかしいんだよ。最近の言動もヤバいって社内でも噂になってるし。旦那の林田さんもかなりまいってるみたいで、毎日疲れた顔してんだぜ」
「そうなんだ…」
「だからリナちゃんが何考えてるかわかんねぇし、俺達も本気で守るからさ、十和田社長によろしく言っといてな」
「あはは、もちろん皆さんにお世話になったことはしっかり伝えるよ、ありがとう」
「よっしゃ!これでデザイン課は安泰だなっ」
「岸の目的はそれか?」
「ちっ違いますって相馬さん!……そういやコンペ、もうすぐっすね!…いーなぁ、シノの作品はもちろんだけど、相手のアサトのも見てみたいっすね。すげー興味あるなー」
「ふーん。じゃあ岸も行く?別にいいわよ、コンペって言っても2社だし、同僚ならいても問題ないと思うわよ。でも旅費交通費は自腹だからね」
「そんなの全然オッケーなんで、俺、行きます!」
なんて話していたら、リフレッシュルームの入口から女の人達の賑やかな声が聞こえてきた。
「俺達の他にもおやつ狙ってる人がいるんすねー」
「まぁアタシらだけってことはないだろうけど…」
と何気なく入口を見た霧ちゃんが、クルッ!とこっちを向いて、顔を近付けた。
「堀田リナがいる」
「あ、そっすね」
すると向こうも私達に気づいたらしく、少し距離を取って女性数人で座った。
リナさんがいる今はコンペの話はできないか…と黙々とお菓子を食べていたら、霧ちゃんが口を開いた。
「あぁそうだ。じゃあ岸、コンペを見に来るなら、ついでにあんた持ってくる?アレ」
「…え?霧ちゃん?」
その言葉に驚いた。
だって、きっとリナさんにも聞こえてるはずだから…
「アレ、持ってってもいーすか?」
「いーわよ」
「了解っす!俺、当日の朝、持ってきます!」
「当日なら忘れない様にね、大事な見本品なんだから。あと簡単には割れない様に梱包しときなさいよ」
「もちろんすよ!」
「…それじゃお腹も満たされたし、帰るか、那知」
「そうだね」
「そっすね。帰りましょ~」
私達はリナさん達に軽く会釈してデザイン室へ戻った。