空色の手紙は執着愛の証 ~溺愛は再会とともに~
『那知、今日も順調だったか?』
「うん、協力してもらってるからね」
『そっか、それはよかった。……それでさ、こっちの事なんだけど…那知にも言っておくな。今日、堀田がこっちに来たんだ』
「えっ、リナさんが?…どうして…」
『…たぶん、林田の時と同じことをしようとしてるんだろう』
「じゃあ…賢太郎さんを狙ってる…ってこと?」
『かもな。…まぁ俺があんなのに靡く訳がないしそれ自体はどうでもいいんだけど、俺の所在を知ってるってことが気に掛かっててさ』
「あっ…そうだよね……詳しい場所なんてTOKIWAは一般社員どころか役員も秘書課も知らないはずだもんね。ホールディングスの仕事なんだから」
『そうなんだよ、怪しいだろ。…それで、堀田を見つけたのがアサトを出る時でさ』
「うん。…あれ?土曜日なのにアサトさんに行ってたの?」
『あぁ。社長が不在の時に他の社員と話したいことがあってね。…そしたら紅羽も会社に来てたみたいで、帰る時に玄関近くで会ったんだ」
紅羽さんと…
「うん…」
「俺が堀田を見つけて怪訝な顔してるのを不思議に思われたから、那知には申し訳ないけど、堀田が林田にした事を軽く話したんだ。堀田がどんな奴か知っといてほしくてさ』
「うん…」
『ごめん……勝手に話したこと、怒ってる…?』
「あ…ううん、それはいいけど…」
『そっか…怒ってなくてよかった。…それで話したらさ、紅羽が俺をガードしてくれたんだよ、堀田から』
「えっ、そうなの?…でもガードって?」
『俺が堀田の前に姿を見せたら案の定馴れ馴れしく近付いてきてさ…まぁ想像はできると思うけど。それをあしらってたら紅羽が来て、最初に那知に取った態度みたいに、あの調子で堀田に噛みついたんだ。その隙に、俺に『早く帰れ』って逃がしてくれて』
「そうなんだ……。ふふ、やっぱり紅羽さんていい人だね」
『でも…那知は嫌だよな……ごめん』
「ううん…お仕事だもん。それに…賢太郎さんは紅羽さんと浮気しないでしょ?」
『当たり前だろ、俺は那知しか愛せないんだから浮気なんてありえねぇよ。…とはいえ、やっぱ那知にとったら他の女が近くにいるのは嫌だと思ってさ…』
「そっか……ありがとう。うん…信じてるから、大丈夫だよ」
『ん、よかった』
ホッとした顔の賢太郎さんに、私も優しく笑いかける。
…うん…信じてるけど…
ほんとのほんとは…いやなの。
怖いの。
だって、紅羽さんはこんなにいい人なんだもん…
何もかもが平凡な私と違って…
美人だし…真っ直ぐで…気遣いもできる、すごくいい人だから。
だから…
浮気が心配なんじゃなくて…
怖いの…
浮気じゃなくて……
本当に紅羽さんを好きになったら…って思うと…
怖いんだ……
でもそんなこと…言えないから……
私はそれを悟られないように…心に閉じ込める。