空色の手紙は執着愛の証 ~溺愛は再会とともに~
思い出した…?
「あっ……すみません、コンペの途中だというのに」
「いいえ、那知さん、よろしくてよ。逆にうるさい小娘がいなくなってやりやすくなりましたわ」
「ありがとうございます、紅羽さん。…では先ほどの続きに戻りましょうか」
那知がそう言うと、2人はまず全ての食器をテーブルの上に出した。
そして、TOKIWAのテーブルと、アサトのテーブルに、それぞれ用意した作品が並べられると、姉貴が他のスタッフを呼んできた。
「こちらは新施設で働く予定のスタッフなの。彼らの意見も参考にしたいと思うので、一緒に見させてもらうわね」
「そうなんですね!それならぜひお願いします!」
那知が楽しそうに言う。
「何だ、那知はジャッジが多い方が燃えるタイプか?」
「ううん。ほら、やっぱりそこで働く人達に〝いいな〞って思ってもらえる物の方が愛着がわいて、お客様にも喜んで提供できるでしょ?」
「…ふ、確かに」
なるほど。那知は本当にホスピタリティを大事にしてるんだな。
そんな那知を尊敬するよ。
…という気持ちを込めて、那知の頭をグリグリと撫でた。
「やっ賢太郎さん、バカにしてるでしょ……もう…髪がわしゃわしゃ…」
ん?
「あっ、ごめん!バカになんてしてないって!」
尊敬の念で撫でたんだが…
ごめん、ごめん、と呟きながら那知の絡まった髪を慣れない手つきで直した。
「じゃあ、そろそろ俺も見ていい?那知」
「うんっ。ふふ、ちょっと緊張するな」
「どんなのでも俺はきっと気に入るよ」
と、並べられた食器に目を移した。
そして、7枚の取分け用小皿に目が止まり、その中の1枚を手に取った。
白い浅リム(縁)皿。
この透明感のある白はボーンチャイナの様だ。
壊れにくいし、陶器より滑らかで触り心地もいい。
リム皿は縁が一段上がった平皿だから持ちやすく、しかもお皿を持った時に指が料理に触れにくいんだよな。
…で、この小皿の何が気になったのかと言うと、リムには1枚1枚それぞれに色と柄が入っているのだが、この7枚の小皿はそれぞれが別の色。
しかも…色によって入る縁の柄が違っていて…
その色と柄の組み合わせが、あの時の懐紙とそっくりだったんだ……