空色の手紙は執着愛の証 ~溺愛は再会とともに~
「…あぁ…横になったらだいぶラク……ありがとう、賢太郎さん……後で紅羽さんと良美さんにもお礼言わなきゃ…」
ベッドに横たわる那知が、ほぅ……と息を吐いて言う。
「そんなこと気にしなくていいから、とにかく休もう。な」
「ん……ありがと…」
……言葉少なに返事をすると、程なくして眠り始めた様だった。
しかし、さっきのあれ…
やはり那知は記憶が消えた訳ではないんだ…
だって俺も取ったから残りが2枚だったんだもんな。
でも……どうする?
……思い出したら……
何もかも思い出したら……
那知は俺のことをどう思うだろうか…
……怖い。
もし…那知に拒まれたら……
俺が、あの時の〝ケンちゃん〞と知って……
俺があれからずっと想い続けていたことを……
気持ち悪いと…思われないだろうか……
もし…那知に嫌われてしまったら……
……怖い。
それが何よりも……怖いんだ……
お願いだ、那知……
もし思い出したとしても……
俺を嫌わないでくれ……
そう祈りを込めながら、俺は、眠る那知の手を握り続けた。
そのままどのくらい那知を見つめていただろう…
ふと部屋のドアをノックする音がしていることに気付いた。
…コンコン……コンコン
「兄貴?いないの?アタシ、霧子だけど」
…キリ?
カチャ…
「あぁ、キリか。どうした?」
「那知は?」
「眠ってるよ」
「そう。…あ、親父が呼んでる、さっきの向日葵の間。アサトの社長に何か言うみたいよ、龍綺も行ってるから」
親父が来たか…
「わかった。じゃあ…那知を頼むな」
「任せて」
俺はテーブルに置いていたジャケットを掴むと歩きながら羽織り、足早に部屋を出た。