空色の手紙は執着愛の証 ~溺愛は再会とともに~
真実
コンコン
「…キリ、俺だ」
ノックして声をかけるとすぐにドアが開いた。
「兄貴、お疲れ。那知も起きたよ。じゃあ、あたしは龍綺のとこに戻るわ」
「ありがとな、助かったよ」
「あっ…キリちゃん、ありがとね」
「姉として当然」
なんてピースを見せて、キリは部屋を出ていった。
「おかえりなさい、賢太郎さん」
「ただいま、那知。俺がついてるとか言っといて、キリに任せててごめんな」
「ううん、お仕事だったんでしょ?私は大丈夫だから…」
「ん、ありがとな」
ベッドの縁に腰掛ける那知の頭を撫でるが、その笑顔に陰りが見えると那知は少し俯いた。
…まだ頭痛がするのか…?
と考えながらも……
なぜか俺の心臓の拍動が悪い予感を思わせる。
「那知……どうした…?何かあったのか?」
その俺の問いに、那知が頭を上げたが…
「あ……あの……」
と言い淀む那知に優しく言う。
「いいよ、言ってごらん」
すると、右手の握り拳を左手で包み、それを胸に当てると、意を決した様に話し出した。
「あの…さっき霧ちゃんがテーブルにぶつかった時に…スマホと手帳が落ちちゃって……その時に…見えたんだけど……手帳のカバーの内側に入ってた…あの手紙って…」
「手紙?」
「あの…青…空色の…」
っ!…まさか、あれを見たのか!?
先程の嫌な拍動が強くなる。
「那知…その中は見た?」
焦りを悟られないように落ち着いて聞くと、「ううん…」とゆっくりと首を横に振った。
中は見ていないか……と、ひとまず安堵した。
「でも何であれが手紙だと?」
「…前に…紅羽さんが教えてくれて…」
「何を?」
「……賢太郎さんには…忘れられない人がいて……それはその人への手紙だって…」
えっ?
「…何で紅羽が手紙の事を知ってるんだ?」
「あっ……」
那知が手で口を押さえた。
「黙ってろって言われた?」
「ううん……そうは言われてないけど…」
「じゃあ教えてくれ。…紅羽は何を言ったんだ?」
とまた優しく聞くと、以前、親父に挨拶に来た時に話してくれたことだと、ゆっくりと教えてくれた。
あぁ…あのロビーで2人でいた時か。
っていうか紅羽のやつ、いつ見たんだよ…
「それで……那知は何が気になってるんだ?…頼むから教えてくれ」
那知の手を握り、那知の目をしっかりと見てせがんだ。
すると、那知も俺の目をまっすぐに見て言った。
「賢太郎さん……まだそのお手紙を持ってるってことは……その人のこと……今も忘れられないの…?」
「!」
那知が俺の気持ちの真実を知りたいと思うのは当然だ。
それは痛いほどわかる。
だが……どうしたらいい?
あれが那知に宛てた手紙だとは言えねぇし…
しかし他人だと言えば…あれをずっと持っていた事で不安にさせてしまう…
クソ……マジでどうすればいいんだよ……