空色の手紙は執着愛の証 ~溺愛は再会とともに~
「結論から言うと、あの手紙は那知、お前に書いたんだよ」
那知の頭をポンポンと撫でる。
「え…?…わ…私…?」
「そう、那知に書いた手紙だよ。……那知と俺は、2か月前に華舞のフロントで出逢う前に、一度出逢ってるんだ」
「えっ!?…ごめんなさい…私、覚えてない……え、どこで……いつの話?」
「いや、謝らなくていいよ。でもごめん、いつ、どこで出逢ったかはまだ言えない。…けど、本当に出逢ってるんだよ。それで俺はその時…当時の那知に…恋をしたんだ」
「えっ!……うそ……」
「ほんと。マジでほんとの話」
「だって……紅羽さんが最初にその手紙を見たのって、確か賢太郎さんが大学を出た頃って……あ、そういえば賢太郎さんが結婚したい人がいるから、って許嫁を断ったって聞いたけど……その人って…」
「そこまで話したのか…。あぁ、那知のことだよ。那知と結婚したいと思ってたから、ずっと許嫁の話を断っていたんだ」
「でも許嫁の話は確か……賢太郎さんが20歳の時の冬って言ってたよ?それなら…その前には出逢ってたってことだよね?」
「……ん、そうだな」
まずい…歳の話になってきたな…
「だって、仮に賢太郎さんが20歳なら、私は…中学生だよ?」
「……ん、そう…だな。…仮に、ではなく、その通りだけど…」
「え?……ハタチの賢太郎さんが…中学生…14歳の私に…恋をした……ってこと…?」
「ん、そうだよ」
「うっ……うそっ!」
あー……気持ち悪いって言われるかな…
ダメだ…
怖くて那知を見られなくて…額に手を当て俯いた。
すると……
「全然信じられないけど……嬉しい…」
そう那知が呟いた。
…え?
「那知、嬉しいって…ほんとに?」
がば!と頭を上げて那知を見ると、顔を覆っている両手の指をチラリと開いて俺を見た。
「ん……だって…信じられないけど…その手紙が私に向けたもので……それをずっと持っててくれたのなら……ずっと想っていてくれてたってこと…でしょう?」
「あぁ、そうだよ。俺はずっと那知を諦めらんなくて…ずっと…ずっと……また逢えることを願ってた」
「ど…どうしよう……嬉しい……」
あー…墓穴を掘るかもしれないが、聞いてみようか。
「あのさ…気持ち悪くないか?」
「え?…何が?」
「ハタチの大学生の男が中学生の女の子に恋をして、結婚したいって思い続けて、もう34だよ?」
「…うん、何も気持ち悪くないけど」
そっか……それを聞いてほっとした。
「よかった……」
俺はまた那知をぎゅう…と抱き締めた。
「もしかして、嫌われるかもっていうのは、その年齢のこと?」
「ん……ロリコンて思われるんじゃないかって…」
「ふふっ……私はロリコンの定義がよくわからないけど……そっか、中学生だとギリギリそうなのかもね。ふふっ…あははっ」
「っ笑うなって!」
「だって……ホッとしたら何だか込み上げてきて…あははっ」
む。
「黙らせるぞ」
と……那知の唇に俺の唇を押し当てた。
もちろん押し当てるだけでなんて終わらせないけど。
「…っ……んん……」
「よし、黙らせた。ハハッ」
なんて、那知から嫌われてないとわかった途端これだもんな。
我ながらいい歳して単純だと思う。
「でも…まだ私に言えないことがあるの?」
「ん……それはごめん。…でも、俺の好きな女は昔から那知だけだってのは隠してないし、本当の事だからな」
「うん…わかった、ありがとう。…賢太郎さんもこれを話すのに勇気を出して…覚悟を決めたんだよね…」
「まぁ…嫌われるかもって心配はあったからな」
「ありがとう。……じゃあ、これ以上は聞かないでおくね」
「ん…」
そして今度は那知を優しく抱き締めた。