空色の手紙は執着愛の証 ~溺愛は再会とともに~
横になったまま部屋を見回すと…ここは個室みたい。



病室に静寂が戻り、私はお兄ちゃんを見た。


「お兄ちゃん…」

「どした?」


「あのね……夢の中に……お父さんとお母さんが……死んじゃった時の事が…出てきたの……事故に遭った事も…」

と言うと、お兄ちゃんが目を見開いて私を見た。

「!……那知……もしかして…思い出したのか…?」


「うん………思い出した、って事は……私…忘れてたんだね…」


「あぁ……忘れてたというか、ショックでその時の記憶を閉じ込めてただけの様な気もするがな。……じゃあ…あの夏の旅行も…」


「…うん…まだ何となくだけど…思い出したというか…うん…覚えてる…」


「そうか。…じゃあ……思い出したのなら、これ…忘れない内に渡しとくな」

と、お兄ちゃんが私に1枚の封筒を差し出した。
A4サイズの用紙が入る位の、大きめの封筒。

…東雲建築事務所の名入りってことは、お兄ちゃんが事務所から拝借してきたのかな。

あれ?でもロゴが昔の…っぽいな。
お父さんがいた頃の事務所の封筒かも。


「何?何が入ってるの?」

と封筒の中身を見ようとした時、シャーッとカーテンが開き「東雲さーん、おはよう!」という明るい声と共に、白衣を着たふくよかな体型の女性が私のベッドにやってきた。

「どうもー、神経内科の内藤ですー。お目覚めの様なのでちょっと診察するわねー」と言うので、その封筒をまたお兄ちゃんに預け、簡単な診察を受けた。

診察の後に記憶に関する問診を受け、その後はお兄ちゃんも先生との話に加わった。

そして、入院中の診療についての説明が終わり、先生がお部屋を出た時には既にお昼を回っていた。

< 145 / 189 >

この作品をシェア

pagetop