空色の手紙は執着愛の証 ~溺愛は再会とともに~

「お昼かぁ……ずっと何も食べてないのにそんなにお腹が空いてない様な…変な感じ…」

「まぁ食ってはいないけど点滴で必要最低限の栄養と水分は取れてるからな」

「そっか。なるほど…」

「でも意識が戻ったことだし、今日の夜から食事が始まるんじゃないか?流動食かもだけどな」

「うん。……そういえばここって華舞から近いの?」

「俺はよくわかんないけど、ケンはホテルから15分位で着くって言ってたなぁ」


『ケン』…
お兄ちゃんは賢太郎さんのことをそう呼んでたよね……懐かしい。


「…そうなんだ。…ふぅ、早く体力つけて元気になって東京に戻らなきゃ」

「ケンはまだこっちにいるんだろ?ならもう少し休んで一緒に帰ったらいんじゃないか?」

「…ん…でも賢太郎さんはお仕事なんだし…邪魔しちゃ悪いから」


「そういや今、こっちにケンの親父さんが来てるらしくて、今日は一緒にアサトさんに行くって言ってたな」


「アサトさんに…?」




……そういえば…あの時……

賢太郎さんが紅羽さんを抱き締めてた…よね…

あれからすぐに頭痛がして気を失っちゃったから…抱き締めてた理由も…何も…わかんない…


けど……


お父様と一緒にアサトさんに行くって事は…
もしかして…結婚の相手は紅羽さんに…?

私がこんな事で倒れてしまう様な弱い女だから…お父様に呆れられてしまった…?


賢太郎さんも……そうなの?

ううん…そんなことないよね…



でも……


あの時…紅羽さんが「浮気じゃない」って言ってた気がするけど…


紅羽さんは美人で素敵な人だから…

その素晴らしさに賢太郎さんが気付いたら…

平凡な私なんかより…紅羽さんに本気になってしまうかも…


…………


あぁ…だめ…
賢太郎さんを信じたいのに…


……自信が持てない……



それに…あの手紙だって私は実際に見た訳じゃない…

賢太郎さんは私に宛てたと言ってたけど…

本当は…私じゃない〝なち〞という人で…

…所詮私は代わりの〝なち〞で…

だからもう私には見切りをつけて…
紅羽さんを選んだの…?



わからない……

わからないよ……


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