空色の手紙は執着愛の証 ~溺愛は再会とともに~
…う…ん………
少し眩しさを感じつつ目を開けると、見えたのは白い天井…
あ……病院なんだっけ……
「那知、起きたか?夕飯来てるぞ」
…ゆうはん…?
ゆっくり上半身を起こすと、お兄ちゃんが食事の乗ったオーバーテーブルを目の前まで引っ張ってくれた。
「お兄ちゃん…お帰り」
「ははは、戻ってきて何時間も経ってるけどな」
「…そんなに寝てたんだ」
「その分、夜中に目が冴えて寝られなかったりしてな。……病院だし…何が出てもおかしくないよなぁ…」
「ちょ、ちょっとやめてよお兄ちゃん」
「はははは、那知の怖がりは相変わらずだな」
「いや、それ普通に怖いから…」
「ま、ケンもいることだし怖かないだろ?」
なんて話してたところに。
コンコン……
「勇貴さん、俺です。入りますね」
その久しぶりに聞く愛しい人の声に、ドクンと胸が鳴った。
「お、噂をすれば、だな」
お兄ちゃんがコソッと私に言う。
そして、ゆっくりカーテンが開けられると、賢太郎さんが顔を覗かせた。
あれだけ不安になって涙も出たのに…
顔を見た一瞬で、不安も何もかもが飛んでった。
私、賢太郎さんが大好き。
「賢太郎さん…」
と呼ぶ私を見た賢太郎さんが、カーテンをバッと払った。
「那知……」
「心配かけて…ごめんなさい…」
賢太郎さんがすぐに駆け寄って抱き締めてくれるかと思ったんだけど…
「…よかった……よかった…那知……」
って、涙ぐんだ目元を隠すように手を当てて立ち竦んだまま…一歩も動かなかった。
「仕事お疲れ!ケン、そんなとこにつっ立ってないで、まぁ座れよ」
「はい…」
そう答えると、そこが定位置なのか、まっすぐお兄ちゃんの反対側に行き、荷物を置くと、そこにある椅子を持ってお兄ちゃんの隣へ座った。
私が用意された夕食を頂いている時に、お兄ちゃんが簡単に今日の事を、先生とのお話も含めて、賢太郎さんに話してくれていた。
その様子を何気なく見ていると、2人には他人行儀な雰囲気が全くない。
そっか…
私が記憶を失くしてただけで、お兄ちゃんも賢太郎さんもお互いを覚えてたんだもんね。
「…そうでしたか、わかりました」
「じゃあ俺はホテル行くな。ケン、後は頼んだぞ」
「はい、任せて下さい」
「じゃ那知、また明日な」
「うん、ありがとうお兄ちゃん、また明日ね」
と返すと、安心した様にニカッと笑ったお兄ちゃんは、私の食べ終えた食器トレーと自分の荷物を持って病室を出ていった。