空色の手紙は執着愛の証 ~溺愛は再会とともに~
「ケンちゃん…」
「ん?」
「賢太郎さんが…ケンちゃんだったんだね…」
「あぁ……うん…黙っててごめんな」
賢太郎さんがそっと手を握ってくれた。
「ううん、言えなかったんだもん…」
ふるふると首を振ると、賢太郎さんが「それってもしかして…あの時の写真かな」と、薄い冊子を見た。
「そうかも…」
と、少しドキドキしながらそれを手に取り開いてみた。
「ほんとだ…あの旅行の写真だ…」
パラパラとめくって出てくるそれは、お父さんとお母さん、ゆうちゃんと私、そしてケンちゃんの、5人家族にも見える、キラキラした笑顔が溢れる写真達。
「…私、まだまだ子どもだったね」
「はは、子どもの様で、大人の様で、俺にとっては愛しさしかなかったけどな」
「こうして見ると、ケンちゃんてほんとにかっこいいよね……昔からすっごいモテてたでしょ。こんなに素敵なら女の人が放っておかないよね」
「んーまぁ……でも俺はこの時から那知しか目に入らなくなったからな」
「ふふ、それが信じられない。こんな何も知らない子どもだったのに」
「そんな真っ透明な那知だから惹かれたんだよ。…正直、それまでの俺は汚かったから」
「…そうなの?」
「ん……こんなこと言うとドン引きされそうだけど…」
「いいよ、言って?今の私はもう大人だから大丈夫だよ、ふふ」
「ん…ありがとう。……それまではさ、愛とか恋とか全然考えたことなかったんだよ、めんどくさくて。…でもまぁ男だし…やることはやる、みたいな」
「え?遊び人だったの?」
「遊び人というか……割り切ってたし、気持ちを弄ぶ様なことはしなかったけど」
「うん。それで?」
「正直、そんな自分が嫌になっててさ……かといって好きな女もできないし……その他にも色々と悩みが重なって辛かった時期に、那知の家族に出逢ったんだよ」
「え、あの時…ケンちゃん、辛かったの?」
「ん……まぁ、知り合いの誰にも会いたくなくて、一人になりたかったくらいにはね」
「そうだったんだ……あ!それなのに私もゆうちゃんもケンちゃんに好き勝手なこと言って絡んでたよね!?…うわぁ……今更だけど…ごめんなさい…」
「はは、いや逆だよ、それに救われたんだよ。そして…純粋な那知に惹かれたんだ。この子とずっと一緒にいられたら幸せだろうな、って」
「ケンちゃんは…そこまで想っててくれたんだ…」
「ん……だから、あれから…那知から手紙が来なくてもずっと諦められなくてさ。もちろん他に好きな女もできなかったし、体の関係を求められても断ってたし、何なら風俗ですら行かなかったからな。ほんとに那知以外に興味がわかなくてさ、マジで俺って不能なのかと思うくらい」