空色の手紙は執着愛の証 ~溺愛は再会とともに~
「まぁまぁ東雲さん、ようこそ華舞雪舞へお越し下さいました。電車は大変な騒ぎになっておりましたものね…さぞお疲れでしたでしょう」
フロントでそう私を労って下さったのは女将。
女将とは仕事で何度かお会いしたことがあるのだけど、夜のお着物姿を見るのは初めて。
モダンな着物も着こなしがとても品があって素敵だなぁ。
確か娘さんと姪ごさんが女将見習いとして一緒に働いてるんだよね。
館内のどこかでお会いできるかな。
「大変遅くなってしまいすみません」
既に夕食をとるお客様も多い時間帯で、フロントにもロビーにもお客はほとんどおらず、余計に申し訳なく思ってしまう。
「いえ、東雲さんには逐次ご連絡を頂いておりましたから、私共も大変有り難く思っておりましたのよ」
「そう言って頂けると嬉しいです」
ほっ…
女将に嫌な顔されなくてよかったぁ。
「それではチェックインのお手続きをさせて頂きますわね。寿人(ひさと)、お願いね」
「かしこまりました。それでは東雲様、こちらにご記入をお願いいたします」
「あっ、はい」
寿人と呼ばれた黒田さんは女将の息子さんで、以前仕事で伺った時に一度お見かけしたことがあった。
ホテルマンらしく、短めの前髪をきっちりと固めて上げていて、落ち着いてるけど、確か私より若いんだよね。
…とか考えながら、カウンターに差し出された宿泊者名簿に記入する。
やったー!
楽しみにしてた露天風呂付きの離れのお部屋に泊まれるんだー!ふふふ
でも…一人で広いお部屋を独占なんて、その分のお金を払うにしても何だかお宿に申し訳ないな。
…とか考えながら、記入したものを黒田さんにお返しする。
「…これでいいですか?」
「はい、ありがとうございます。それではご案内の準備をいたしますので、もう少々お待ち下さいませ」
ホテルマンらしい、きっちりとした笑顔でそう言われ、フロントのカウンターから少し離れて待つことにした。