空色の手紙は執着愛の証 ~溺愛は再会とともに~
さて──
賢太郎さん達がわが家で〝粉パ〞を楽しんでいる頃、私達は、霧ちゃん行きつけのビストロで女子会の真っ最中。


「…そーいやさぁ、今日もカタログが届いたわよ、林田んトコから。どんどん新作を出しててさ。あいつも奥さんのために頑張ってるみたいねー」

「そうだね、うちの取扱いでも人気が出てきてるもんね」


…あのコンペから半年経った頃、既にリナさんと離婚していた尚人はTOKIWAを辞めて、北関東にあるご実家へ戻られたの。
家業の瓦屋を継いでいたお兄さんが不慮の事故で身体が不自由になり、弟である尚人が継ぐ事になったそうで。

その数年後、同じ職場で働く年上の女性と結婚すると、瓦だけでなく食器の製作にも取りかかったりと、それまでの『林田瓦店』をどんどん変えていった。

しかし「食器は自社で売るには知名度も力もないから」と尚人直々にTOKIWAにセールスをかけてきて、うちとしても悪い話ではなかったから『林田瓦店』と取引を始めたんだって。


「林田の奥さん、林田が初めて付き合った男らしいよ。性格も見た目も悪くないけど、確かに奥手っぽいもんね」

「そうなんだー。穏やかで優しいからモテてるんだろうけど、じゃあ、好きになれる人がいなかったんだね」

「霧子、営業でそんなことを聞きますの?」

「あはは、違うわよ。女同士の世間話からあちらが話し出したのよ」

「ふふ、ほんといい人だし、林田さんも幸せそうで良かった」


「でも、霧子も龍綺さんとしか付き合っていませんわよね?」

「そうよー。あたしが中学生の時に付き合い始めて、大学を卒業した日に入籍したからね。あたし達はお互いが初めて同士だったし、もちろん浮気もしないからさ、お互いに他の人を知らないの」

「そっかぁ……ふふ、素敵だなぁ」

「ほんとに意外ですわね、霧子は男を知り尽くした女に見えますのに」

「あっははは!ま、龍綺だけは知り尽くしてるからねぇ」

「ふふっ、それは幸せなことだね」

「てか紅羽はどうなのよ、岸が初めて?」

「えぇ、私は春之新が初めてお付き合いした方ですわよ」

「やっぱそうなんだ」

「まぁ…お兄様の許嫁と思い込んでいましたから、他の方とのお付き合いは考えておりませんでしたわ」

「そうだよね…私が言うのもあれだけど、ごめんなさい…」

「いいえ那知さん、逆ですわ。私、お兄様を待つ身でいたことに感謝してますの」

「え?」

「おかげで春之新という心から愛する人に初めてを捧げることができたんだもの。うふふ」

「紅羽さん…」

「じゃあ意外や意外、この中では那知が一番男を知ってるってことかぁ」

「や、そんな知ってるって訳じゃ…」

「でもさ、それらの最高峰が兄貴なんでしょ?」

「うん、それは間違いないよ。ダントツで最高峰!私にとって賢太郎さん以上の人なんていないもん。ふふっ」

本当にそう思ってる。
賢太郎さんほど私を愛してくれる人なんていないもん。


「しっかし、那知も紅羽も今や人気のデザイナーだもんね~、大したもんよ」

「私はまだまだだよ」
「あら、私もまだまだ無名ですわよ、霧子」

「まーたまたー、今や各々ブランド持つほどの2人の合作だから『月舞星舞』で売れてるんじゃーん」


と、いうのは……
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