空色の手紙は執着愛の証 ~溺愛は再会とともに~

──10年前のコンペの結果は、岸くんが提案した通り、大皿は紅羽さんデザイン、小皿とボウルは私のデザインが採用されたの。

ちなみに、私のデザインは無意識とはいえ懐紙のデザインを利用していて、微妙に違ってはいるものの、そのままでは意匠権や商標権などの侵害になるかも…と、賢太郎さんと一緒にかなめさんにお話しし、正式に決まった製品は少し変更を加えたものになったんだ。


そして、驚いたのは『月舞星舞』オープン初日!

夕食の後、とあるお客様からフロントに「ここのお皿ってどこかで売ってるの?」と質問があり、かなめさんがお客様に理由を伺うと、要は「気に入ったから欲しい」とのこと。

…まさかそんな要望が出るだなんて、想像だにしなかったよ…


それで、かなめさん達と相談し『少しでも需要があるのならば』と、サービスの一環として、宿泊者限定で食器セットの販売をフロントで始めたんだ。

すると、お帰りの際に「記念に」とか「家でも使いたい」と買われていく方が予想外に多くて、これにはTOKIWAとしても驚いちゃった。


──それでこの度、『月舞星舞』のオープン10周年記念デザインを作ることになったんだけど、そのデザイナーに紅羽さんと私を指名頂いたの。


「今度はどんなのにしようかなぁ…ね、紅羽さん」
「そうですわね…『森のグランピングリゾート 月舞星舞』だから……森と…」
「月と星と?」
「えぇ、何だかそんなイメージがありますの」
「わぁ!私もなの!でもグリーンのお皿っていうのも何だから、どう森を表そうかな…って」
「私もですの!緑一色だとお料理がね…って思ってましたの」

「んふふ、ほんとウチのデザイナーは仕事熱心だこと」

「熱心っていうか、楽しいんだよね」
「そうですの!ワクワクしますわよね」

「なーる、そこが原点なワケね」

と、嬉しそうに笑う霧ちゃんが梅酒ロックをグイと一口飲むと、私を見た。

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