空色の手紙は執着愛の証 ~溺愛は再会とともに~

──それでは本題の【一答深ボリ】ですが、今回は〔問10 座右の銘は?〕にしたいと思います。これは珍しく奥様のお話とはかけ離れているみたいなので(笑)

『そうですか(笑)』

──その含み笑いが気にはなりますが参りましょう。〔問10 座右の銘は?〕の答えに〔歩んできた道は、自分が選んで切り開いた道〕とあります。失礼を承知で申しますが、十和田社長は生まれた時からこの道が用意されていたのでは?

『それは、親の敷いたレールに乗っかってきた、ということでしょうか』

──ズバリ言われてしまいましたが、十和田社長は三代目でおられますし、〝十和田家に生まれた宿命〞とか〝十和田家の帝王学〞みたいなものがあるのではないかと。

『そんなものはありませんよ(笑) ですが、確かに父からは「跡を継げ」と小学生の頃から言われていましたし、私もそういうものだと思っていました』

──でしたら、回答の〔自分が選んで切り開いた道〕というのは何でしょう?

『高校生の頃は、このまま父の敷いたレールに乗って行く事が当たり前だと思っていました。東京の高校もアメリカの大学も父が決めた様なものですし。…それが、大学に入ってから考えるようになったんです。自分の人生…生き方はこれでいいのか、と』

──そうでしたか。私からすれば、順風満帆そのものだと思いますが。

『そうですね、環境を見れば順風満帆かもしれません。ですが私は〝自分は親の操り人形なんじゃないか〞と思い始めて』

──操り人形、ですか。

『えぇ。自分の人生を他人に決められていいのか、自分で我が道を切り開くのが大人なんじゃないか、と…悩んでも自分では答えが出せない時期がありました』

──どなたかに相談されたのですか?お父様とか。

『父に相談できたらよかったのでしょうが、流石にレールを敷いた本人には言えませんでしたね。当時は聞いてもらえないという先入観もありましたし』

──確かにそれは言いづらいかもしれません。

『えぇ。それで、その悩みを聞いてくれた人が私に言ったんです。「ただレールに乗っかってるだけじゃない。今の賢太郎くんがあるのは、この道にいることを自分で選び、自らの手で切り開いたからだ」と』

──なるほど、真っ向から否定して下さったんですね。

『そうです。本当にありがたくて嬉しかったです。それから私は、目標と、自分の人生に自信を持つことができたんです。誰に何と言われようと、これは自分で選んで切り開いた道なんだとね』

──十和田社長の自信に満ちた風格はそこから来ているのですね。

『えぇ、間違いなく(笑) 今の私を作ってくれた最初の人である恩人のお陰です』

──ところで、その方とは一体どなたなんですか?

『ご期待に添えず申し訳ないのですが、妻のお父さんです』

──ああ!それであの含み笑い(笑)

『そうです(笑)』

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