空色の手紙は執着愛の証 ~溺愛は再会とともに~
何とかチェックインができたことに、ほぅ…と安堵の息を吐く。
そして、ゆっくりとロビーを見渡した。

壁に飾られた絵画の数々。
それに、きらびやかでありながら古臭さを感じさせないシャンデリアが目に留まり、昼に見た時とは違うその豪華さと華やかさに圧倒されていると、フロントの方から聞こえる男性の声に耳が反応した。

そして、その声になぜか……胸がざわざわと…ドキドキと…騒ぎ出した。



「寿人くん、久しぶり。俺1人なんだけど、どこか部屋空いてないかな」

「賢太郎さん!帰ってきたんすか、久しぶりっすね!えっと、今日はあいにく満室なんすよー」

「だよなぁ……添乗員部屋とかも空いてないかなー……何なら夜中だけでいいから大広間で寝させてくんない?」

「ハハハ、久しぶりなのにいきなりそれ!?さすがに無理っしょー、ハハハ」

「そこは寿人くんの裁量でさ」

「それこそムリムリ、オレより賢太郎さんの裁量の方が利くだろうし、ハハハ。母ちゃんに直談判したらどうっすか、大広間」


か、母ちゃん!?
The きっちり!な、ホテルマンの黒田さんのこの砕け具合にちょっと驚いちゃった。
お客っていうかお友達なのかな?
いや、この人の裁量の方が利くとかどうとか言ってたし…身内の人…?


あっ、そういえばこの人、泊まるとこがないんだっけ。

…そうだよね、トップシーズンの土曜日だもん、どこも満室で予約無しなんて無理だよ…

急な出張とかなのかな…

あ、私がキャンセルしてたら泊まれたのかも…


と気になってしまい、そちらに顔を向けて見ると、その男性はスーツ姿で、カウンターに肘をついていた。
それだけで背が高いとすぐわかるほどスタイルがいい。

そのせいか目が離せないでいると、その男性の、後ろに流している長めの前髪が少し乱れているさまに、ドクリと胸が鳴った。


すると…

「ははっ、まぁそれは冗談だけどさ。でもどうするかなー…」

と、ぼやくその男性が身を起こしながら振り向き、パチッと目が合った。


あっ!
見てたの、バレちゃったかな。

でも…初めてちゃんと顔を見ただけなのに…
何でだろう、ドキドキが止まらない。

何で?
カッコいいから?

また目が離せなくなり、しばしその男性と見つめあってしまった。


…知らない人なのに懐かしいような嬉しい様な気がして…ドキドキする…

…何だろう…この気持ち…



そして…


「…あの、私の部屋でよければ、泊まりますか?」



気付けば、私はそう口に出していた。

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