空色の手紙は執着愛の証 ~溺愛は再会とともに~
見開きで誌面いっぱいいっぱいに書かれている文字の背景は、一面、薄いブルー。

「空色みたい、きれいな色だね」

「あぁ、空色だな。どこかの問いに〔好きな色は?〕ってあって、そこに書いた色が背景色になるんだってさ」

「あ、ほんとだ、〔空色〕って書いてある。ふふ、理由が〔妻に似合うと言われたから〕って。でも…そっか…回答って賢太郎さんの直筆なんだよね」

「何か嫌だった?」

「んー……嫌っていうか、賢太郎さんの字を他の人に見られたくないっていうか…あまりいろんな人に賢太郎さんを知られたくないっていうか…」

「…それは独占欲?」

「んー……そう…なのかな…」

…私は賢太郎さんの妻で、こんなに愛されてるのに、何でこんな事でもやもやしちゃうんだろ…

「へへ、ごめんね、奥さんなのに私ってばケチん坊だね。じゃあ百問読んでみよっと。……ん?賢太郎さん?」

ふいに賢太郎さんの後ろからの抱擁がきつくなった。


「…俺の奥さんで、こんだけ近くにいて、俺の子を3人も生んでるのに独占欲見せるとかさ…」

「あっ…ごめんね、心が狭かったよね」

いけないいけない。奥さんなんだからもっと寛大にどっしりと構えてなきゃね。


「もう…どれだけ俺のことが好きなんだよ…」


「…っ……」

首筋と耳元に感じる賢太郎さんの熱い吐息に、胸の真ん中とお腹の奥がきゅうっと反応する。


「はぁ……那知、そんなに俺のことが好きなの…?」

「ひゃっ」

私の体を仰向けに倒し、覆い被さる賢太郎さんのギラギラとした熱情を湛えた眼差しに素直に答える。


「うん…結婚して何年経っても大好きなの。だから……お仕事のスーツ姿も……特徴のある字の癖も……会社でたまに見せる優しい笑顔も……囁かれただけでクラクラしちゃうその声も………全部、全部……賢太郎さんの全ては私だけのものだから……誰にも見られたくない……知られたくないの」


…なんて愚かな独占欲。

でも…

奥さんであっても、
どれだけ愛されていても、
優越感も余裕もあるわけがなくて。


だって…

愛したい、愛されたい想いは貪欲だから。

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