空色の手紙は執着愛の証 ~溺愛は再会とともに~
「…お部屋のご案内は以上になります。それでは20時にこちらにお食事をご用意いたしますわね」
「遅くにすみません、宜しくお願いいたします」
最後にニコリと笑顔を見せて、女将はお部屋を後にした。
「…あの、十和田さん…」
「あぁ、何かな?」
「あの、私、ほんとに盗っ人(ぬすっと)みたいなことはしませんけど、万が一何かあった時に疑われるのも嫌なので、本当に大事なものはフロントへ預けておいて下さい。お願いします」
「…ぶ」
ぶ?
「あっははは!」
十和田さんが上を向いて大笑いした。
あれ、また笑われた。
「あの…?」
「ははは、ごめんごめん。東雲さんていいね」
「…はい?」
「盗っ人って……さっきも自分の事を怪しい者扱いするし、夜這いとかさ……言葉のチョイスがいいよね……クククッ」
「そうですか?」
私には普通の事なんだけど…おかしいのかなぁ。
「あぁ。そのセンスにも性格が表れてていいと思うよ……クク…」
「あの……それにしても笑いすぎじゃないですか…?」
「クク…あぁ、悪かったね。バカにしてるわけじゃないんだ。あまりにも可愛らしくて」
「かわい、らしい…?」
「あぁ、素直で可愛らしい子だなと思ってさ」
「それはどうも……褒められてるのかわかりませんが」
「褒めてるさ。フロントからの一連を見ていて、あなたのことは本当に素直で可愛いと思ってるんだから。それにしてもあのセンス……ククッ」
「やっぱり褒められてる気がしません。というか、十和田さんが笑い上戸なだけですよね?私、笑わせるほど大したことは言ってないですし」
「いや…俺が普段ここまで笑うことなんてまずないよ。特に女性の前でこれだけ笑うなんて何年ぶりだろうな」
「そうなんですか…」
私は珍獣みたいなものなのだろうか。
「さて、食事の前にひとっ風呂浴びてくるかな」
「では私もそうします」
普段使いのシャンプー類や化粧水と替えの下着を1つの袋に入れておいた〝お風呂セット〞をボストンバッグから取り出した。
そして隣の部屋に浴衣を取りに行く私に、十和田さんが「部屋の露天風呂に一緒に入るか?んん?」と冗談とわかる言い方をしてきた。
だから「いえ、そんなお目汚しはできません」と答えると、案の定、十和田さんは大笑い。
「自分の裸をお目汚しって…もぅ…あっははは!」
それを背中で聞きながら「ではお風呂行ってきまーす」と部屋を出て、本館にある大浴場へと向かった。