空色の手紙は執着愛の証 ~溺愛は再会とともに~

20時を過ぎ、テーブルに並べられたご馳走を挟んで、十和田さんと対面で座る。

前髪を下ろしている十和田さんの浴衣姿は大人の男の色気というのか何なのか、女性をクラクラさせる何かが出てるみたい。

ちなみに私も浴衣姿だけど、すっぴんだし、昨日買ったダイヤのピアスも外してるから、大人っぽい要素が一つもない…

うーん、なんて対照的。



「じゃあ、東雲さんとの出逢いに乾杯」
「か、乾杯です…」


「…あ、おいし」
少し照れつつ口にした食前酒のスパークリングワインは、苺の風味がして飲みやすかった。


「では、いただきまーす」
「俺もいただきます」


うーん、どれから箸をつけたらいいか迷っちゃう!
目を楽しませてくれる先付けのお料理達と、それを引き立てる器に、うふふと自然に頬が上がる。


じゃあ…最初はコレ!
パクリ。
……もぐもぐ……んー!お出汁のきいたお味が美味!

じゃあ次は…こっち!
パクリ。
……んんー!このシャキシャキの歯触りと柚子の香りがたまんなーい!

と、お料理を楽しんでいると。


「はは、旨そうに食べるな。ところで東雲さんの下の名前は?」

そう聞かれて、まだ自分から名乗っていなかったことを思い出した。


「すみません、自己紹介がまだでしたね。東雲 那知といいます。字は…あっ、ちょっと待ってください」

バッグから名刺を出し「こういう者です」と、十和田さんに差し出した。
仕事もしてるし、怪しい者じゃないですよ、の意味を込めて。


…じっくり見てるけど…何かお気に召さないところでもあったかな…

なんて心配してたら、十和田さんがフッと微笑んだ。

「…那知ちゃん。可愛い名前だよな」

「あっありがとうございます」

十和田さんに「那知ちゃん」って呼ばれたら、胸が甘く、きゅん!て疼いた。

…これほどのイケメンさんからの『可愛い』なんて言われ慣れてないから…そりゃあときめいちゃうよね。
(言われたのは名前のことだけど)


「那知はいくつ?」

急に呼び捨てにされて、きゅん!からドキン!に変わったけど、恥ずかしいからそれは見せないようにしとこ。

「えっと、28歳になりました」

「そうか……若く見えるよな」


うっ……

「…はい……実年齢は…若くないんです…すみません…」

「あぁ悪い、可愛いから若く見えるって意味で言ったんだが…すまない」

「いえ…若く見えても……実年齢が若いわけじゃないですから……アラサーですから…」

妊娠出産も…いや結婚ですらもう望みは薄くて…

はぁ…

って今はそんなことを気にしてる場合ではない!
このご馳走と器たちを目一杯楽しむんだから!


止まりかけた箸を再度動かし、目の前に次々と運ばれてくる美味しいお料理を堪能した。


うーん、どれもおいしくて美しくて大満足!

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