空色の手紙は執着愛の証 ~溺愛は再会とともに~
俺の胸に寄り掛かる那知を、優しく抱き締める。
さっき……間近で見たら、ほんと可愛いくて堪らなかった。
14年前と変わらない、くりっとした二重の目、白い肌に柔らかそうなピンク色の唇。
ダークブラウンのさらりと素直に揺れる髪がまた那知の可愛さを引き立てていて。
外見も可愛いけりゃ、ころころとした高めの声も、少し舌足らずな話し方も、優しい性格も可愛くて。
もう全てひっくるめて、那知は完璧に可愛い。
…俺のベッドに寝かせようか。
それとも、那知の布団がいいかな。
今日のところは添い寝で我慢するよ。
焦ってがっついて嫌われたらヤだし。
「んんー……」
あ…起きてしまったか。
邪な思いがバレたかな、ハハッ、残念。
「んー……お風呂入る」
那知がむくりと体を起こし、俺の胸から離れるや否や、驚くことを言った。
「は?風呂?」
「ん。お部屋の露天風呂に入ってくる」
そう言って目をこすりながら立ち上がったが、案の定ふらついている。
俺もすぐさま立ち上がり、倒れる前にしっかりと抱き止めた。
「バカ、こんな状態で風呂は危険だ」
「バカでいーから入るー」
「ダメだ。絶対溺れるから」
「むー……じゃあ賢太郎さん、一緒に入ってくれる?」
ナニッ!?
「っ!…それは……」
入っていいなら入るけど…とかなんとかゴニョゴニョと口ごもっていると。
「あははは、じょうだーん。だいじょぶー、私は1人で生きてける女だから1人で入れるのー」
…と、俺の腕の中から出ていった。
「おっ、おい…本当に危ないって…」
那知がシャーッと和室の部屋のカーテンを開けると、そこは上半分がガラス張り。
そしてその向こうには庭に面したテラスがあり、露天風呂とデッキチェアが設えてある。
壁の端にあるドアを開けてテラスへ出ると、ランプを模したオレンジ色の灯りに照らされながら、那知が埋め込みタイプの露天風呂へ近づいた。
「わぁ、温かい!ほんとに露天風呂だぁ、すごーい!」
縁の岩に手を掛けると反対の手でお湯をかき混ぜ、ちゃぷちゃぷと鳴らす。
「待てって…マジで危ないから…」
そう俺が止めるのに「外は涼しいし、そのうち酔いも覚めるからだいじょぶー」と言ってきかない。
…どうしたらいいものか…と俺が頭を悩ませている隙に、那知は浴衣を脱いでデッキチェアに置いた。
「わあっ……な、那知…」
すかさず反対を向いて、那知を見ないようにした。
「んー?なーにー?」
「だから脱ぐなって……」
「えー?だって温泉に入るんだよー?脱がないと」
「だからさ……」
そうじゃなくて、男の前だぞ?
いくらなんでもさ…
あ、まさか俺は『男』ってカテゴリーじゃない……のか?
あぁ…だからさっきも無防備に寄り掛かってきたのか…
……ガックリ。