空色の手紙は執着愛の証 ~溺愛は再会とともに~
もういても立ってもいられず、急いで部屋に戻ってバスローブを2着持ち出すと、またテラスに戻った。
そして身に付けているものを手早く脱いでさっとシャワーを浴び、那知のいる湯船にザブンと入った。
「!…賢太郎さん……どうして…」
体育座りで俯いてた那知が、泣き顔のまま目を丸くして俺を見た。
「那知が一緒に入ればいいって言ったんだろ?」
ニヤリと笑うと、那知が慌てて「あれは…冗談で…」と言う。
「ごめんな、俺、冗談が通じない男だからさ」
そう言う俺に那知は、ふっ…と優しい笑顔を見せた。
「ありがとう…賢太郎さん……ごめんなさい…心配かけて………それに…暗いとはいえ、見たくもないでしょうにお目汚しまで…」
ふ…ほんとにこの子は…
ってか、こんな行動を起こしてもまだ、俺が保護者として那知を見ていると思ってるのか…
まぁ、そもそも手を出される危機感を持ってなさそうだしな。
「それこそお目汚しは俺だろ。三十路半ばのおっさんだからな、はは」
「あははっ、賢太郎さんなら目の保養ですって」
そう笑う那知が可愛くて思わず抱き締めそうになったが、ここはグッと堪えた。
「那知…俺には無理しなくていいからな」
「ん、無理なんてしてないよ」
なんて少しだけ陰りのある笑顔で言う。
「…なぁ、まだ元彼の事が好きか?」
那知の頭にポンと手を添えて問うと、少しの沈黙のあと「…わからなくて…」と呟いた。
「…そりゃそうだよな…まだ昨日の今日だもんな。そんな簡単に嫌いになったり忘れることなんてできないよな」
「…ううん、違うの……もう尚人の事は好きじゃなくて…」
「えっ」
好きじゃない?
「ん……もう好きじゃないし、未練もないけど……この2年て……私の存在って…何だったんだろう……って…」
「あぁ…」
そういうことか…
「私……尚人にとって…どんな存在だったのか…わからなくて……あれだけ尚人のために頑張っても……結局私は…若い子に負ける存在でしかないのかと……なんて…エヘヘ、ごめんなさい、ただのアラサー女の愚痴だったね」
その、涙目の作り笑顔を見たとたん、俺の本能の何かがドクン!と胸を叩いた。
…那知、俺もう我慢しないから。