空色の手紙は執着愛の証 ~溺愛は再会とともに~
……キィ……
と、ドアの開く音がして、そちらに顔を向けると、バスローブを軽く羽織った賢太郎さんがテラスに出てきた。
わわっ!
朝から色気がすごい!
「おはよう、那知」
不意にこちらを向いて、その色気のまま優しく笑うから、少し緊張しちゃった。
「おおおふぁようございましゅっ」
やだ、思いっきり噛んじゃった。
「ふっ、何でそんなに固くなってんの」
「や、や、全然固くなんて!」
「あっははは!…まったく…那知は可愛いんだから」
そう言うと、シャワーをさっと浴びてざぶんと湯船に入ってきた。
「あー……気持ちいー………」
「ですよね。ほんとに気持ちよくて…」
「何で今さら敬語?……クッ」
「だっ、だって…」
何だか気恥ずかしくて下を向いた。
「那知は俺のお嫁さんになってくれるんじゃないの?」
「えっ!」
いきなりストレートに来たものだから、びっくりして顔を上げちゃった。
「…なってくれないのか?」
「ううん!なりたい!なるんだけど……あの、覚えてるの…?」
「当たり前だろ。俺は酔ってもなかったし。まぁ酔ってたとしても本気で惚れた那知との会話なら、言ったことも言われたことも全部覚えてるはずだから」
「そっか…よかったぁ…」
昨日の言葉はほんとに本気だったんだ。
よかった…
ほぅ……と安堵のため息をつくと、不安が無くなったことで嬉しさがじんわりと沁みてきた。
「なんだ?あれは俺が抱くためだけに言った甘言蜜語とでも思ってたのか?」
「ううん!…ただ…『結婚』て言葉は出なかったから…どういうつもりだったのかな、ってちょっと思って…」
「そうか…」
すると、賢太郎さんが後ろから私をあぐらの上にひょいと乗っけて、ゆったりと抱き締めた。
「賢太郎さん?」
「ごめん、俺そういうのよく分からなくて。…俺の中では、ずっと離さないって事も、俺の子を産んで欲しいって事も、結婚が前提ってか当然の事だったから」
「うん、私もそう思ってたけど……ただ言葉では聞いてないから、私の勝手な思い込みだったら悲しいなぁ、って」
「そうか……それは本当にごめん。大事なことはちゃんと言葉に出さなきゃしっかりと伝わらないんだな…わかった。……それはそうと、那知」
「ん?」
「さっきさぁ、起きた時に隣に那知がいなくて俺すごい焦ったんだけど」
という言葉と共に、ぎゅうぎゅうと私を抱き締める力が強くなった。
「うん。朝風呂に入りたくて。賢太郎さんはおやすみしてたから、そっと抜け出してきたの」
「なぜ俺を起こさない」
…はい !?
「いやいや…ぐっすり眠ってるんだよ?普通、起こさないよね?」
「…俺はずっと一緒にいたいのに…離れたくないのに……那知は違うのか?」
…後ろから抱き締められたまま、賢太郎さんが可愛い事を言う…
キュンっ
「そっそりゃあ私も一緒にいたいけど…でも今は早朝だし、同じお部屋のお風呂だし……とにかく自分の都合で起こすのはよくないもん」
「普通はそうかもしれないけど俺はいいから。とにかく俺から離れるなよ…」
と……私の首筋に賢太郎さんの唇と舌が這う。
「……っ」
ちゅ……ちゅる……
「ん……あっ…」
そのまま賢太郎さんの大きな手が、私の胸と腿の内側をまさぐる。
「あぁっ…………やっ…だめ…」
…昨夜を思い出しちゃって、自然とカラダが甘い刺激を期待してる…
「ん?……ここは全然ダメって言ってないけど?……ほら…抵抗なく指が入った……ふ、こんなに締め付けて…可愛い……ほら…ここがいいんだよな?」
「あぁんっ……やっ、ああっ!」
賢太郎さんの長い指が、私をもっともっと狂わせようとしてる…
でも…これは言わなきゃ…
「んあっ……けっ賢太郎さん……っ」
「どうした?…ふ……ベッドに行くか?」
「あのっ…朝ごはん」
「………は?」
賢太郎さんの動きがピタリと止まった。
そこで、力の抜けた賢太郎さんの手をどかすと、「うんしょ」と脚の上から降りて言う。
「あの、そろそろ支度しないと……朝ごはんの会場は本館のバンケットホールだし」
着替えとお化粧もしたいから、そろそろ支度を始めないと。
そう思って言ったのだけど…
「はぁ………俺の気持ちは…愛は…朝メシに負けたのか……朝メシに……」
って、賢太郎さんがガックリと肩を落としちゃった!
ああぁ!どっどーしよ!
「や!そうじゃなくて!負けてないし!」
「……負けてるじゃん……」
「違うから!賢太郎さんの事、大好きだから!愛は負けてないから!」
「……じゃあ、キス」
「えっ」
「ここでキスして。はい」
って…今度は正面でひょいと抱っこされて、また脚の上に乗せられた。
はっ裸で向かい合わせって恥ずかしいんだけど!
…けど…
キスするからね、安心してね。
大好きだよ。
と、賢太郎さんの頬に手を添えて、男らしく形のいい唇にそっと口づけた。
ちゅ…
う?
……んんっ!?
頭の後ろを大きな手のひらで押さえられたと思ったら、賢太郎さんの舌が入ってきたっ!
でも……ふふっ
それが嬉しくて……心が気持ちいい。
賢太郎さんに深くキスをされながら、髪を梳くように頭を撫でられ、ぎゅうっと強く抱き締められると、私を求める想いがすごく伝わってきて…
身支度とか、どうでもよくなっちゃった。
私ってこんな人間だっけ…?
ううん、賢太郎さんが私をこんな風にさせた。
私の大好きな賢太郎さんが……
私を狂わせる。
「ふぁ……賢太郎さん…」
「那知…すげぇ色っぽい顔してる……ふ、部屋に戻るか」
「…うん…」
そして私は賢太郎さんに身を委ねた。