空色の手紙は執着愛の証 ~溺愛は再会とともに~
「…は……やっぱ那知が可愛すぎてだめだ…抱き足りない……もう離したくない、朝まで」
「や、一度家に帰らないと…」
「いんじゃない?明日、今日と同じ服で俺と一緒に出勤するの」
「やあぁ!それ、思いっきり〝お泊まりしました〞ってバラしてるでしょ!」
「あっははは!まーね。っていうか、俺はバラしたいくらいなんだけど」
なんて話をベッドでするのも楽しくて幸せだな…
って幸せに浸ってたら、那知が俺の手に小さな手を重ね、少し神妙な面持ちになった。
「那知?どうした?」
「あの……お昼に霧ちゃんが言ってたクレハさんて…どんな関係の人…なのかな…」
…あぁ、やっぱ那知は察してたか。
「あれだけで、どうして気になった?」
「ん…ちょっと賢太郎さんの空気が変わった気がして」
「ふ……やっぱ那知はすごいな…」
「ううん、そんなこと」
まぁわざわざ隠すことでもないし、言っておいた方がいいかもな。
「安里 紅羽(あさと くれは)っていって、俺達きょうだいの地元の幼馴染みで、親父の方の遠い親戚なんだ。キリと同い年なんだけど、昔っからキリとは相性が悪くてさ」
「うん」
「それで、十和田ホールディングスの子会社の『アサトテーブルウェア』の社長の娘で、紅羽もそこで働いてる」
「あぁ、アサトテーブルウェアの…そうなんだ…。あっ、そういえば、あの……」
「ん?」
「十和田ホールディングスってことは、もしかして賢太郎さんのお父様って…」
「それ言ってなかったよな。あぁ、親父は十和田ホールディングスの社長だよ」
「……そっか……賢太郎さんて…本当にすごい立場の人なんだね……」
「なんで?」
「だって、ホールディングスの社長の息子さんだもん…」
「俺は親父とは関係ないよ。俺はホールディングスのイチ社員でしかないから」
「でも、跡を継ぎなさいとか…言われてないの?」
「まぁそれは小さい頃から言われているけど、まだ現実的な話じゃないし」
「あ、あと……紅羽さんて…賢太郎さんのことが好きなの?」
「…ほんと、那知は鋭いな。…あぁ、そうみたいだな。でも俺は一度も紅羽に対して恋愛感情を持ったことはないし、それは紅羽も知ってる。というか、そもそもはっきりと断ってるから」
「…でも…今も諦めてないんじゃ…?」
「実はさ、俺の親父と紅羽の親父が、俺と紅羽を許嫁だとか言って結婚させたがってんだよ。でも俺は元から紅羽と結婚する気は無いし、親父達にも紅羽にもそのつもりはないと最初からずっと言い続けてる」
「そうなんだ……でも紅羽さんは、賢太郎さんのお父様達の言葉を受けて、賢太郎さんと結婚するつもりでいるよね、きっと…」
「…どうだろうな。最近は会う事すらないから分からないけど、俺が那知と結婚したらさすがに諦めるだろ」
「そう…かな……それに…お父様も賢太郎さんの相手が私だと、結婚を許してくださらないんじゃないかな…」
…そう顔を曇らせる、不安そうな那知を強く抱き締めた。
「俺は那知じゃなきゃ嫌だ。紅羽も他の女もいらない。俺は那知とずっと一緒にいたい、これからの人生を那知と一緒に生きて行きたいんだ」
「でも、お父様が…」
「俺は親の言う通りに動くだけの子供じゃない。誰が何と言おうと、俺は那知と結婚する。俺が家族になりたいのは那知だけだ。…那知は違うのか?反対されたら俺と別れるのか?」
「ううん…ううん!私も賢太郎さんじゃなきゃやだ!私、賢太郎さんの家族になりたい!賢太郎さんとの家族を増やしたいよ!」
そんな可愛いことを言う那知がたまらなく可愛くてキスを落とした。