空色の手紙は執着愛の証 ~溺愛は再会とともに~
…なんて思い出しながら幸せに浸ってたら、運転しながら賢太郎さんが軽くため息をついた。

「はぁ………お兄さん、なかなかのシスコンなんだろ?…俺、刺されたりしない?」

「あはは、霧ちゃんから聞いたの?」

「あぁ。キリは会ったことあるんだってな」

「うん。こっちの温泉に2人で旅行に来た時に立ち寄ったの。霧ちゃんのことたくさん話してるから、霧ちゃんへの信頼はものすごいの。だから霧ちゃんのお兄さんの賢太郎さんも気に入られると思うけどなぁ」

「…だといいけど…出逢ってすぐの2人の結婚だからな、まずは俺を信用してもらうのが先だよな。すぐに許してもらえないのは覚悟してるよ。……そういや林田と付き合ってた事、お兄さんは知ってるのか?」

「うん、会ったこともあるから…。もちろん別れた理由も電話で話してあるよ。…ふふ、霧ちゃん以上に怒ってた」

「だろうな。…お兄さんと那知、8つ違いだったよな」

「うん、今36歳」

「…でも、まさか那知のご両親が2人とも亡くなってるとは思わなかったよ。……那知もお兄さんも苦労しただろう」

「…私は苦労っていうのはあまり感じたことないかな、いつも回りの人達に助けてもらってたから。…でも、お兄ちゃんは大変だったと思う…」

「そうだよな…」


あ、これは言っておかないと…

「…あのね、実は私…よく覚えてないんだ…」

「何を?」

「お父さんとお母さんが亡くなった頃のこと」

「えっ?」

「両親は立て続けに病気で亡くなった…みたいなんだけど…」

「みたい、って…?」

「私……お葬式にも出てる筈なんだけど…その頃のことが全然思い出せなくて…」

「思い出せない…?記憶がない、ってこと?」


「うん……とってもヘンなこと言うけどごめんね。…あのね、気付いたらお父さんとお母さんが亡くなってて……お兄ちゃんと私は隣の市の親戚の家に引っ越してて、私は別の中学校に転校してたんだ。お兄ちゃんは元の家があった市にある大学に通ってたから通学時間がちょっと伸びたみたいだけど」


「…そうか…」

「ごめんなさい、大事なことなのにちゃんとお話しできなくて…」

「いや、謝ることじゃないよ。それだけ那知は辛い思いをしたんだな。…あ、すまないが一つだけ聞かせて。それは那知がいくつの時?」

「2人が亡くなったのは、私が中学2年の夏…だったよ」


「じゃあ…14年前の夏か……そう……ありがとう。…お兄さんはご両親が経営してた建築事務所を継いでるんだったよな?」

「うん。お父さんとお母さんが同時期にいなくなったから…それからずっと、お父さんが会社を立ち上げた時から居てくれてるベテラン社員さんに代表を務めてもらってたの。お兄ちゃんは大学の時から事務所でアルバイトしてて、卒業後に正式に入社して、仕事しながら勉強して一級建築士になって、それで数年前に代表になったの」

「そうか……お兄さん、すごいな」

「ふふ、ありがとう。私も自慢のお兄ちゃんなの。あっ!お兄ちゃんの奥さんの琴江(ことえ)さんも一級建築士なんだよ!お兄ちゃんが入る前から事務所で働いててね、お兄ちゃんより2つ上なの。優しいサバサバ系で、すごくしっかりしてて、琴江さんだからお兄ちゃんはやっていけるんだと思う」

「ははは、それは心強いな」

「そうなの。私は建築士のお仕事はよく知らないんだけど、琴江さんとお兄ちゃん、それに他のスタッフさんも建築コンペで賞も取ってるんだよ」

「へぇ!それは本当にすごいな!でも那知は建築に興味なかったの?」

「えっと…元々デザインは好きだったけど建築は全然で…インテリアの方が好きなんだよね」

「そっか。まぁTOKIWAもインテリアと言えばそうなんだけど、何で食器専門のTOKIWAに入社したんだ?」

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