空色の手紙は執着愛の証 ~溺愛は再会とともに~
「お待たせ。はい、これが俺の住所と電話番号」

「わぁ……ありがとう、ケンちゃん!絶対にお手紙書くからね!」


嬉しそうに受け取ってくれる那知が可愛くて…愛おしくて……たまらずそっと抱き締めた。


「ん、待ってる」


「けっ…ケンちゃん…」


ちっちゃくて可愛いな…
一緒に…向こうに連れて行きたい…

…本当に可愛くて…
この子に隣にいてもらえたら何でも頑張れそうな気がするんだ。



一度、腕を離して那知を見る。
はは、顔が真っ赤だ。
なんか新鮮だな。可愛い。


「那知ちゃんも俺をハグして」

「…ハグ?」

「ん。挨拶じゃなくて親愛のハグな」

「えと…どうしたら…」

「両手を広げてから、俺にぎゅって抱きつくみたいに」

と言うと、那知は素直にそれに従った。


「…これでいいの?」


…那知ちゃんが俺を抱き締めてくれている…

それが嬉しくて、俺も抱き締め返す。

「あぁ、上手。でも俺にはもう少し強くしてもいいよ」

その言葉でもう少し俺に近づくと、ぎゅう、と腕に力が入り、身体が密着する。

……ヤバい、すげぇ嬉しい……


「こ…こう…?…痛くない?」

「うん、全然痛くないよ。上手にできました」

なんて、いかにもハグの練習みたいに答える。
…俺ってあざとい男だったんだな。



「那知ちゃん、男とのハグは初めて?」

「うん……ハグなのか分かんないけど、男の人に抱きついたのは、ゆうちゃんとお父さんにしかしたことないよ」


「そっか。じゃあ……キスは?」


「ななっなないないない!」
って、俺の胸に頭を密着させたまま、グリグリと頭を左右に動かしてる。


ふ…可愛い…


「キス…してもいい?」


「…え……?」

頭を上げた那知が、不思議そうに俺を見た。

「って初めてが俺じゃイヤだよな、こんな年上だし」

「…ううん!やじゃない!…でも…ケンちゃんはしないって…さっき…」

「…好きな人じゃなきゃしない、って言ったんだよ」

…これじゃ俺が那知を好きだと言ってる様なものだけど…

「……」

俺を見上げたままの那知は、きょとんとしてる。
意味、わかってない?


…あ、急に真っ赤になった。

ふ、俺の言葉の意味に気付いてくれたみたいだな。


「キス、してもいい?」


「うっ…うん」

そこで腕を離して、那知を見た。
ふ、真っ赤で可愛い。


「目を閉じて……那知…」

今だけでも俺だけのもの…って思いたくて…初めて名前を呼び捨てで呼んだ。


きゅっ、とまぶたを閉じた那知の頬に手を添え……瑞々しい唇に、優しく口づけた。


……柔らかくて…気持ちいい……


ほんの数秒…何度か触れるだけのキス。

だけど、これが俺が生きてきた中で、いちばん幸せを感じた時間。



キスなんていつも女からせがまれてしてただけで、キス自体に特に意味も理由も考えてなかった俺が……今、すごく嬉しくてドキドキしてる。

キスが幸せだ、と思う自分に驚いてる。


っていうか…俺、自分からキスしたいと思ったのも「してもいい?」って聞いたのも…初めてだ。

そっか。
ある意味、俺にとってもファーストキスだな。


なんて嬉しく思いながらそっと唇を離すと、那知がまぶたを上げた。
くりっとした可愛い瞳が俺を捉える。


「那知ちゃんの初めてのキス、俺がもらっちゃったな」

「ありがとう……嬉しい…」

真っ赤になりながら、はにかんでそう答える那知が可愛くて…

「うん、俺も」
って言って、また抱き締めた。



「那知ちゃん……大人になって、それぞれの希望した仕事に就いたら……俺のお嫁さんになってくれる?」

「…ほんとに私がケンちゃんのお嫁さんになってもいいの?」

「うん。那知ちゃんが隣にいてくれたらいいな、って思ってる。…イヤ?」

「……ううん!私、ケンちゃんのお嫁さんになりたい!…だから、勉強もデザインとかもたくさん頑張るね。…お手紙も書くね。ちゃんとした大人になるから……だから……それまで待っててね」

「うん。じゃあ最初の返事はあの空色の懐紙に書くよ。……俺も那知ちゃんを幸せにできる大人の男になるために頑張るから。…俺達だけの約束な」

「うん!私達だけの約束!」



……そんな、子供じみた誓い。


だけど……俺はこの約束を忘れることはなかった。

この約束のために頑張ってきた、と言っても過言ではないのだから。

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