空色の手紙は執着愛の証 ~溺愛は再会とともに~
11月に入って間もない今日、『華舞雪舞』で賢太郎さんのお父様に初めてご挨拶するのだけど…
新幹線に乗る前からずっと緊張しっぱなしで、華舞の豪華絢爛なロビーで海を見渡せる席に座るも、眺める余裕すらない。
「親父達、予定ではあと30分位で終わると思うけど…って那知、大丈夫か?」
「うっ……うん……大…丈……夫…」
「…じゃないな、顔色が悪い」
「………」
…はい、ごめんなさい、嘘言いました…
全然大丈夫じゃないです…
心臓がドキドキしすぎて吐きそうです…
すると賢太郎さんが「ちょっと待ってて」と席を立った。
すぅぅ……はぁぁ……
深呼吸をして、顔を上げる。
さぁ、海を見てリラックス、リラックス!
…と意気込んだものの…
穏やかな秋の陽射しに照らされた海を見ても、やはり何の感情もわかなかった。
あぁ…ただでさえ認めてもらえなさそうなのに、更にこんな状態じゃ余計に嫌われてしまう…
どうしたらいいんだろう…
と泣きそうになっていると…
「那知、少し部屋で休もう」
戻ってきた賢太郎さんが私を立たせた。
「良美さんにお願いして、今だけ1部屋借りたから。さ、一緒に行こう。少しでも休んだ方がいい」
その賢太郎さんの優しい声と表情に泣きそうになりながら、ゆっくりと歩きだした。