空色の手紙は執着愛の証 ~溺愛は再会とともに~
ロビーの奥にあるシックなカラーリングのエレベーターで上がったのは、中ホールと小ホールがそれぞれ数部屋ある3階。

しっかりと私の腰に腕を回してくれている賢太郎さんと幾つかのホールの前を通りすぎると〝鈴蘭の間〞が見えてきた。


あそこに賢太郎さんのお父様がいらっしゃるんだ…と思うと、ぶるりと身体が震えた。


賢太郎さんが、コンコンとノックするとドアを少し開けて「親父、いいか?」と中に顔を覗かせた。

「あぁ、待っていたよ」

その落ち着いた声が聞こえると、今度はドクン!と胸が震えた。

…緊張がまたぶり返しそう…と重ねた両手をぎゅっと握ると、賢太郎さんの大きな手のひらが私の背中を撫でた。

「那知は俺が守るよ」

…その優しく力強い笑顔に、嫌な緊張感がふっと消えた。

うん、私には賢太郎さんがついていてくれる。

賢太郎さんに笑顔を向けると「可愛いよ」って、ドアの陰でちゅっ、と軽いキスをしてくれた。

ふふっ、優しいな。


ドアを大きく開けると賢太郎さんが先に入り、後から入る私をエスコートしてくれた。

そして、お父様の座るソファの前に行くと、隣に立つ私の腰を抱いた。

「親父、こちらが俺の奥さんになる東雲 那知さん」

すぅ、と軽く息を吸う。
「初めまして。東雲 那知と申します。本日はお忙しい中お時間を頂戴し、ありがとうございます」
と、目を合わせて挨拶をしてから頭を下げた。


「さ、那知、座ろう」
「はい。…失礼いたします」

テーブルを挟んでお父様と向き合うソファに座ってもまだ、賢太郎さんは私の腰を抱くように手を当てたままでいてくれる。
その大きな手のひらの温もりと心のあったかさで、私の心が震えることはなくなった。

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