空色の手紙は執着愛の証 ~溺愛は再会とともに~
「おじさま!賢太郎が来てるんでしょ!?」

そう叫びながら部屋に入ってきたのは、栗色ロングストレートヘアの、なかなかの美人さん。

…そして、この人が紅羽さんだと、ピンときた。


すると彼女は賢太郎さんを見つけ「会いたかったわ!」と…隣にいる私が見えていないかの様に、賢太郎さんに抱きついた。

…すかさず「やめろ!」と賢太郎さんが引き剥がしたけど。


「ねぇ、結婚の挨拶に来たんでしょ?そこに許嫁の私がいないなんておかしな話じゃない」

あぁ、やはりこの方が紅羽さん…


「俺が結婚する相手は、この那知だ。お前じゃない。今、親父にもそう話していたところだ」

と、私の身体をぎゅっと強く抱き締めた。

「けっ賢太郎さん」
「あぁ悪い、痛かったか?ごめんな」
って、少しその手を緩めてくれた。

「ううん、大丈夫だよ。だけど…」
「ん?なんだ?」

「ちょっと…この手は…」
と、抱き締めてくれている手を、とんとんと軽く叩く。

「…俺に抱き締められるの、嫌か…?」
「嫌とかでなくて…今は良くないと思うよ。ね?」
「そうか…那知がそう言うなら…わかった」
と、手をまた私の腰に当てた。

いや、本当に紅羽さんの目の前でこういうのはね…逆効果っていうか、余計反感買っちゃうっていうか。


「賢太郎は……本当にこの方と結婚するつもりなの?」

「あぁ、もちろん」

すると紅羽さんが私を見据えた。
「那知さん…と仰ったわね。アナタ、どちらのご出身?」

「おい、やめろ」

「あら、許嫁の私は聞く権利があるはずよ。…それで?那知さんのお父様はどのような会社を営まれていらっしゃるのかしら?」

…〝経営者の娘〞がデフォなのね…


「私の両親は共に14年前に他界していて、現在は8歳上の兄が地元の群馬で、両親が経営していた建築事務所の代表を務めています」


「14年前…」
ポツリとお父様が呟いた。

「はい。…私が中学2年生の時に、2人とも病気で……すみません、私はその頃の事を覚えていなくて、詳しくご説明できないのですが…すみません」

申し訳なくて少し俯くと、賢太郎さんが肩を抱いてくれた。
「那知、いいんだよ、もういいから」

顔を上げて、その優しさに笑顔で答えると、賢太郎さんも優しい表情を見せてくれた。

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