空色の手紙は執着愛の証 ~溺愛は再会とともに~
それからしばらくして…ようやく頭痛が弱まってきた頃に、賢太郎さんの声がした。
「那知?どうした…大丈夫か!?……紅羽、那知に何してる」
そのやや冷たい言い方に疑問を持ち、ゆっくりと頭を上げた。
そして窓側を見ると、肘を外側に広げている紅羽さんの姿はまるで仁王立ちしている様に見えたが、それは、広げたケープコートによって日陰を大きくしているのだとすぐにわかった。
「賢太郎さん!違うの!紅羽さんは私の急な頭痛をすごく心配して下さって…薬を分けて下さったり、お水を持ってきてくれたり…しかもずっとこうして私に日が当たらないように立ってて下さって…」
という私の言葉に、賢太郎さんが紅羽さんを見ると、紅羽さんはサッと仁王立ちをやめ、恥ずかしそうにフイとそっぽ向いた。
「そうか…それは疑ってすまなかった。それに…那知についててくれてありがとう、紅羽」
「いいえ、どうってことなくてよ。…那知さん、酷くなるようでしたら賢太郎に言ってお部屋を用意してもらうのがよろしいかと。…では賢太郎も来たことですし、私はこれで失礼いたしますわ。…コンペで戦えるのを楽しみにしておりますわね。…お大事になさってね、ごきげんよう」
…と紅羽さんは私達から離れていった。
「那知、大丈夫か?部屋取ってくるよ」
「ううん、大丈夫……少しずつ…治まってきてるから…」
紅羽さんて本当はいい人なんだね。
…あんなに…上品な言葉遣いを忘れるくらい心配して……賢太郎さんが来るまで側にいてくれたんだもん…
最初あれだけ怒っていたのは、それだけ賢太郎さんの事が好きだってことだよね。
そして、あんなに喧嘩腰だったのは、いきなり現れた私が〝金目当ての女〞かもしれないから…
仮にそうだとしたら、賢太郎さんと十和田家が食い物にされないために、化けの皮を剥がそうと躍起になっていたのだろうという気がしてきた。
そんなまっすぐな紅羽さんと、コンペで正々堂々と戦いたいな。